恋するトマト

一昨日。TV録画して置いた「シリーズ証言記録兵士たちの戦争」を見た。
この映画の舞台でもあるフィリピン、ルソン島。私事ながら叔父が終戦2ヶ月前に戦死した島でもあるだけに集中力が凝縮して来る。此処での終戦前数ヶ月に亘る出来事は、映画では到底得られぬ悲痛さに胸掻きむしられる思いであった。
この映画でもクリスティナの父親であるフィリピンの老人が、当時の述懐をするワン・ショットには思わず襟を正す。

そのような障害を乗り越えて、クリスティナとの愛を結実させる正男には素直に好意を寄せたくなって来る。
人口減少中の我が国。農家に来る嫁は少ない。これは三度目の正直で目的を達した野田正男(大地康雄)の体験物語。
彼が最初に体験するエピソードは極く自然で素直な流れ。なかなか清々しい。納得も出来る。
だが二度目の挿話は如何にも仰々しい。且つスローテンポ。
極論かもしれぬが、こちらが本命の話かと、錯覚し兼ねないような演出に見える。
細かいことは省略。兎に角いろいろあって、波瀾万丈の末、クリスティナとの愛を結実する正男だった。
大地康雄、渾身の熱演が一際目立ったが、男と女の愛物語だけではないところに、この映画のレベルの高さを認めたい。
それは農業への愛。自分自身、ささやかながら菜園作業に於ける様々な苦労と喜びとを体験しているだけに、それが良く理解出来る。
フィリピン農地に実る日本の大玉トマトが、えにも言われぬ美しさに映えるのもその由縁であろう。
【私の評価】佳作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→③。
2005年('06公開)(2012/8/3TV録画観賞=初見).日[監督]南部英夫[撮影]小松原茂[音楽]寺田鉄生[主な出演者★=好演☆=印象]★大地康雄。富田靖子。☆アリス・ディクソン。ルビー・モレノ。清水紘治[上映時間]2時間6分。