喜劇 にっぽんのお婆あちゃん

題意のお婆ぁちゃんは、サトと、くみ。浅草の仲見世で出逢った二人。
お互いに、「結構な隠居暮らしをしている」と嘯く。高度経済成長に突入した頃だったもの。この映画が作られた時代(1962年)は。
その割りに身なりはそれ程でもない二人。確か、サトは65歳。くみは72歳と言ったと記憶している。年の割りには老けて見える。平均寿命が延びた現在の眼からは、そう見える。
今なら、この程度の歳の人はずっと若く見える。10歳は違うだろう。
幾歳月の経過は、人間の体格も変えるのだ。若人の体型もスリムになったもの。貧富の差は如何に変わったのだろう。
それにしても、サトに扮したミヤコ蝶々。くみを演じる北林谷栄。二人の俳優さんの当時の実年齢をTVで言っていたが、聞いて吃驚。あれだけよく老け役をこなしたものだ。
遠くの親戚よりも近くの他人。という言葉がある。もっとも一概には決めつけられない。ものの、この映画は、そこを主張する。
若い他人も親切だった。食堂店員の十朱幸代や、老人ホームに勤める市原悦子。等々。それにしてもこの二人、若い!!。
くみが戻った老人ホーム。誕生パーティで、アカの他人同士の爺さん、婆さんが、手に手を取り合って唱い踊る。そこには幸せ一杯の楽しさが爆発していた。安木節が最高。

それにしてもこの映画。老人キャストの豪華さよ!。飯田蝶子。浦辺粂子。村瀬幸子。東山千栄子。左卜全。中村是好。山本礼三郎。殿山泰司。伴淳三郎。etc.etc.。
ホーム責任者の田村高廣や、栄養士の沢村貞子は若手なんだ。
此処は冷たい空気に覆われた都営住宅の一室。当時のモノクロ・テレビで、くみの老人ホームの誕生パーティに見とれるサト。その背が寂しい。
放映終わり、夜も更けて。サトの枕許に鎮座する風呂敷包み。それが何を物語るか。言わずとも由。
これは喜劇であって、喜劇に非ず。