別離 2011年('12公開)イラン

この映画は夫目線と妻目線に掛かる比重の差で所感が変わるかもしれない。どちらかと言えば前者に重きを置いた私だが、その理由は男性だからという単純な理由だけではないと思う。また其処に此の作品価値を見出す。
痴呆症の父と、プラス思考の妻との狭間で悩む夫に共振する。決して妻が悪いと言うに非ず。娘を思う親心は両者に通ず。イスラム社会の壁や、血の通わぬ人の非情。奥行きも豊かな拡がりを見せている。
決して結論を求めない。ただただ現実を厳しく凝視した物語は、アッと驚く課題を投げかけて終わる。秀作と判じた理由は、演劇風で地味な内容から脱皮させたこの非凡さにある。