ある子供 2005年.白耳義/仏

「息子のまなざし」では感銘するものがあったが、今回の作品は正直言って感心しないジャン=ピエール・ダルテンヌ作品である。
無茶苦茶な人生を辿る父親に売られてしまう可哀想な赤ん坊ジミー。真っ当に生きることの出来ぬ20歳の男と18歳の女の間に生を受けた。でもこの命には何の罪もないというのに。
ところで、「どんなに詰まらぬ映画にも何処かに佳いところがあるものだ」という淀川先生の言葉に薫陶を受けている私。此の映画では終盤近くにそれらしきものを見つけた。
牢獄のブリュノを尋ねるソニアであるが、此処でもある種の違和感が残った。何というか、自然な行動に思えないのだ。あれだけ愛想を尽かした男だというのに。
と、此処で終えれば一塊の幼稚な感想文で終わってしまいそう。その事を避ける為に敢えて一言。大局的観念から見れば、今や世界の国々に起こっている社会現象に鋭く視線を注いでいるとも云える。些細なところではカメラワークもキラリと光るものを見受けたりする。
ある子供とは、おん歳20歳のブリュノを指すのだと思うが、大義広義からそういう観点から見れば、支持出来得る作品となろう。
だが「息子のまなざし」のようなテーマ発露が此処では見られず。無謀な行動描写に重心が傾いている。不完全燃焼と思う。私をしてその評価を下げさせた因かもしれない。辛うじて佳作。