父、帰る

ふと高校時代に演劇部が演じた菊池寛の「父帰る」を思い出した。日本人固有の人情が滲み出る芝居だった、所変われば品変わる。こちらの映画は当然、露西亜人気質が横溢している。その厳しさは気候風土と同期するからだろうか?。
しかし父と子の宿命的な愛を描いた点は共通していると思う。(以下ネタバレ気味)
タイトル・バックの海底に眠る舟。見事な伏線から一貫したブルー基調。それは日曜に始まり、多分、土曜(と思う)に終わる。
木漏れ日の森。白い雲と草原。短い露西亜の夏の中で、、。
①日曜。
第2の伏線となる飛び込み台。其処で分かる兄弟の性格。


②月曜。
強印象の「クズ」という台詞の中で 父帰る。

③火曜。
「テント張り直せ」に代表される父の意図。
④水曜。
勃発する父子鷹の軋轢と葛藤。「ペチトヴオまで何㎞だ」。「ホラ!釣りをしろ」イワンを置いて出発する父。

「何故帰ってきた」。そして遂に出る「あんた」(父に向かって)。それでもスリップする車の復旧を子に教える父。ブルー基調の雨と夜。
⑤木曜。
ブルーは続く。海。島。舟。嵐。僅かな赤。それは焚き火。日記「今度触ったら殺す」。父のナイフ。不気味。
⑥(多分)金曜?。
また雨。凌ぐ廃屋「建って100年かもな」。「1時間で戻れ」約束違反する兄弟。アンドレイを殴る父。「殺せよ」と兄。「嫌いだ」と弟。(父に向かって)。高所恐怖症を忘れて見張り台に逃げるイワン。

父、とんでも無いところへ帰る。夜明ける。
ということは土曜。
タイトル・バックと同じ光景に、「あっ」と驚く。その一瞬。
「何故父は出て行ったか?」という野暮な考えを消してくれたのは、ラストのモノクロのスライドだった。
「そうだったのだ」と。
やはり堅かった父と子の絆よ。
【私の評価】優れた作品です。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→③。
2003年(04公開)(2011/11/TV録画観賞=初見).露[監督]アンドレイ・スピャギンツェフ[撮影]ミハイル・クリチマン[音楽]アンドケイ・デルガチョフ[主な出演者★=好演☆=印象]☆イワン・ドブロヌラヴォフ。ウラジーミル・ガーリン。☆コンスタンチン・ラヴロネンコ[原題]VOZVRASHCHENIYE[上映時間]1時間51分。