その男ゾルバ

「サントゥーリを弾くさ」と、ゾルバが、バジルに対し冒頭近くで話した言葉が脳裏に残った。なんでもクレタ島に伝わる楽器らしい。
エーゲ海の南に浮かぶクレタ島。その存在は知っていた。だけど、常識外の風習には驚きの連続だった。財産略奪。遺体の放置。自殺した息子の仇討ちをする父親。「この島に警察は無いのだろうか」と。
このような異様な風習が残る環境の中で、ゾルバとマダム。バジルと未亡人。二組のカップルの対比、対照をくっきりと浮かび上がらせた演出は非凡。出演者も熱演している。

殊に、お互いを「カナバーロ」「ブブリーナ」と呼び合い、縺れた糸のように、離れては愛し合う前者カップルは凄みが走る。
ゾルバが言い放つように、「おろかさがないと、人は自由になれない」のだろうか。
サントゥーリの伏線はラストに活きた。野性の逞しさを讃歌するように、二人の男が踊るラスト・ダンスは見事である。

現地語の時は、英語の字幕を鏤め、ギリシャ独特の空気をこの一編に満喫させたマイケル・カコヤニス監督。先々月、永眠されたようである。合掌。
【私の評価】可成りの意欲ある佳作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→③。
1964年(65公開)(2011/9/12.TV録画鑑賞=初見).米/英/希臘(20世紀FOX)[監督]マイケル・カコヤニス[撮影]ウォルター・ラサリー[音楽]ミキス・テオドラキス[主な出演者★=好演☆=印象]★アンソニー・クイン。アラン・ベイツ。★リラ・ケドロヴァ。☆イレーネ・パパス[原題]ZORBA THE GREEK/ALEXIS ZORBAS[上映時間]2時間20分。
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