若者のすべて

これは、ぎゅうぎゅうに握ったお握りだ。それも単純な塩味だけの…。海苔さえ巻いていない。梅干しすら入ってない。ロッコのシモーヌに対する兄弟愛が、ぎゅんぎゅん詰まって飯粒が砕けそう。
塩味の具合はちょぴり辛め。そこまでして助けるか?という思いも何処かで交錯するからだ。
イタリア南部の片田舎で夫に先立たれた妻が、4人の息子を伴いミラノに住む長男の家にやって来る事から始まるこの映画。
弟が兄の為に闘うボクシング場面と、当の兄が、想いを弟に替えたナディアを殺す場面のクロス・カッティングがクライマックスを形成している。
ラスト近くでの、家の建築と、生贄を結びつけた台詞は、シモーヌを指しているのだが、何か、やりきれなくて、やるせない。いろいろと考えさせられる映画だ。
ヴィスコンティ監督が此の3年後に撮る、貴族滅びの美学を描いた「山猫」でさえ、冒頭部で庶民に目を注ぐ1シーンがあったのが忘れられぬ。これは正に世に言うネオ・レアリスモの一角を成す作品と推察する。
だが「自転車泥棒」のヴィットリオ・デ・シーカ監督や、「戦火のかなた」のロベルト・ロッセリーニ監督の作品とは、稍趣を異にする感有り。
「淀川長治映画塾」を読むと、貴族の出に執着しなかったルキノ・ヴィスコンティは、30才で巴里に行き、ジャン・ルノワール監督の助監督も勤めたという。更に更に、マルセル・カルネ監督や、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の薫陶も受けた模様。
こういった体験が、ルキノ・ヴィスコンティ監督の作風に、眼に見えざる影響を与えているのかもしれない。
そういえば此の作品は伊/仏合作映画になっていた。
【私の評価】優れた作品です。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→③。
1960年(2011/9/17TV録画観賞=初見).伊/仏[監督]ルキノ・ヴィスコンティ[撮影]ジュゼッペ・ロトゥンノ[音楽]ニーノ・ロータ[主な出演者★=好演☆=印象]☆アラン・ドロン。★レナード・サルア゙ァトーリ。★アニー・ジラルド。クラウディア・カルディナーレ。☆カディーナ・パクシ。スピロス・フォカス。。[原題]ROCCO E I SUOI FRATELLI[上映時間]2時間56分。
スポンサーサイト