パリで一緒に

冒頭から私事で恐縮です。母が自分の死を予感したのであろう。病の床で時々走り書きしていた自分史を、後日読んだ。その時「これを映画にしてみたい」と夢見たことを思い出す。
無論一素人の私には儚き夢に過ぎぬ。が、映画作りは楽しいだろうなぁ。と思う。
1954年5月30日。セントラルという地方劇場で観た「アンリエットの巴里祭」は、そのような夢を満たしてくれる楽しい映画だった。
ダニー・ロバンの愛おしかったこと。最後の花火のロマンチックだったこと。FIN直前の台詞「既に映画は完成している」の鮮やかだったことよ。
このようなフランス映画の魅力を、ハリウッドはアメノカ映画特有の明るさでリメイクした。
冒頭シークェンスの、あの眩しさは明らかに、The Endの米映画。断じてFinの仏映画ではない。
「フェイド・イン」…「外景、パリ……」。「フェイド・アウト」。「カメラ、ズームイン」。「○○○……」。といった類のメガホン指令が、無論英語で頻繁に飛び出す。
だが、現れては消え去るエッフェル塔や凱旋門は、ハリウッドが持つフランス映画への憧憬に写ったのは私だけか?。
撮影所の入口「FRAN STUDIO」の看板が、如実にそれを証明しているように見えたもの。
これと同じような気配というか、空気というか、そういった類のものを、この映画の3年後の「おしゃれ泥棒」でも味わった自分である。同じオードリー・ヘップバーン主演というのも影響していたのだろうか?。
いろいろ書いたが決して拙い映画ではない。後味も極めて爽やかだ。「映画が好き」「ヌーベルバーグは嫌い」「私が好きなのは西部劇」「西部劇。ミュージカル。史劇。あらゆるものが泰然と同居」「共通点は映画とキリンだ」「どの映画も好きなパーティの場面」てな言葉が飛び交う中で、カーチェイスが忽然と出現したりする。
「エッフェル塔を盗むなんて大愚作」「アメリカ映画が使う手がある」「…ハッピーエンド」と、ハリウッドのフランス映画に対する対抗意識もちょっぴり覗かせつつ、トキ色のドレスがよく似合うオードリー・ヘップバーンの巴里祭は終わる。
【私の評価】中の上。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→④。
1963年(2011//DVD観賞=初見).米(パラマウント)[監督]リチャード・クワイン[撮影]チャールズ・ラング[音楽]ネルソン・リドル[主な出演者☆=印象]☆ウィリアム・ホールデン。☆オードリー・ヘップバーン。トニー・カーティス。ノエル・カワード[原題]PARIS - WHEN IT SIZZLES[上映時間]1時間50分。
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