0(ゼロ)からの風

0からの風という題名はピッタリだ。然し乍ら当初の私には違和感の風が吹いた。相手の名前に「くん」「さん」を付けて呼び合う母親と息子に、突然の輪禍。視線を変えれば、茂木圭子の決意と行動の源は、あの違和感の風だったのかもしれない。
兎に角、0からの風は荒ましかった。それは善意のマスコミさえ、たじろがせた。何度も何度も。その激しさに袂を別つ同志さえ出た。禊ぎに来た犯人も再び逃げ去る。だが、「心のない言葉はゴミと一緒」と言い放つ茂木の脊に後光を見た。
病気になった事が無い人には、病気の人の気持ちは解らない。という言葉を聞く事がある。この映画を加害者の目線で見る人は居なくても、第三者の尺度で見る人は多いだろう。この映画の意図を真に理解するには、実際に被害者の立場にならなければ、真に解り得ぬかもしれない。
だけど、少なくとも子を亡くしたという点では同じ立場の私。この映画の途中から、共感の風が吹いて来たことだけは確かなようである。
田中好子さん、鬼気迫る熱演。合掌。
【私の評価】佳作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→②。
2007年(2011/12/8TV録画観賞=初見).日[監督]塩屋俊[撮影]岡田賢三[音楽]寺田志保[主な出演者★=好演☆=印象]★田中好子。杉浦太陽。袴田吉彦。豊原功補[上映時間]1時間51分。
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