ラフマニノフある愛の調べ

先日、多くの報道機関でソ連邦崩壊20年を取り扱っていた。思えば解放までのロシア作曲家は受難の連続だった。ラフマニノフや、プロコフィエフはアメリカに難を逃れた。蛇足ながら一人孤軍奮闘したショスタコーヴィチは、ナチの圧力下で故国フランスに踏み留まった映画界のマルセル・カルネに似ている。
閑話休題。
映画はラフマニノフの交響曲第二番の旋律が流れる中でオープニング。後半は彼の亡命中の描写が主流となる。アメリカ国内巡業100回目の演奏。興行主催者からピアノを弾く人形を贈られたラフマニノフが憤然となる場面が強印象。

その反動か。原題にもなっているライラックが効果的。花は好きだ。彼が故郷のライラックに寄せる想いがひしひしと伝わる。「弾きたくない」「10年弾いてばかり」「作曲していない」「10年1音符も書いていない」…駄だっ子のようになるラフマニノフ。
そんな彼に、故郷以来終始付き添うナターシャの愛は愛おしく映る。そんな夫妻の中に突如割り入るマリアンナだが…。いきなり混じり合うのは如何なるものか。天才は繊細である。彼の代表的作品の一つ、交響曲第二番は斯くして生れた。と、映画は伝える。

彼にはターニャという愛娘も居た、ラフマニノフ一家三人の出国に助力するマリアンナだが。この辺りの心理描写は息切れしたのか?。稍消化不良気味に写った。
静かな静かな雪の夜。ロシア正教の建物が深い余韻を棚引かせて…再びライラックの花が。そして出たぁ「パガニーニの主題による狂詩曲第十八番変奏曲。
「何時出るか、何時出るか」と、待ち詫びていた私の耳に…。美しくも豊かな旋律が流麗に消えゆく中で、映画は静かに終わりを告げた。
ラフマニノフの曲を二文字で現せば「抒情」。私は好きだ。ただ、映画(の作り)としては稍平凡。
【私の評価】中の上。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→②。
2007年(08公開)(2011/12/14TV録画観賞=再見).露[監督]バーヴェル・ネンギン[撮影]アンドレイ・ジェガロフ[音楽]ダン・ジョーンズ[主な出演者★=好演☆=印象]☆アフゲニー・ツィガノフ。★ヴィクトリア・トルストガノヴ。アレクセイ・ペトレンコ。ヴィクトリア・イサコヴァ。イゴール・チェネヴィチ。ミリアム・セホン。アレクセイ・コルトネフ。[原題]LILACS[上映時間]1時間36分。
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