男はつらいよ 寅次郎夢枕

このシリーズ全作に、おばちゃん役で出演された三崎千恵子さんが永眠された。衷心よりご冥福をお祈りいたします。
この第10作では冒頭で、元気溌剌な近所の娘さんが嫁ぐ姿を見掛けて、「あまり笑うと化粧が剥がれるよ」と笑顔で話しかける。
どちらかと言えば、画面の端の方に居る方。例え地味でもこの人が居なければ、この物語の味わいは多少落ちただろう。人の心が分かる人だった。
嫁ぐ人もあれば、離婚し戻って来る人も居た。寅さんの幼馴染み、千代だった。その彼女に惚れる岡倉。二人の提灯持ちをする寅さんだったが…。
「人は誉め合ってこそ向上する」ご前様の言葉が味わい深い。寅さんの縁談話で、趣味=旅行。職業=出版関係。学校=実力主義。は傑作。

しぶ柿と大根干し風景に、ヴィヴァルディの「秋」が佳く合う。「愛染かつら」では28才だった田中絹代さん。此処では62~3才だろう。甲州旧家の奥様役で、寅さんに人生を語る。風にそよぐ薄の穂。舞い落ちる落ち葉。山は雪だった。

「先生はお二階でお勉強」千代に扮する八千草薫の心根優し。彼女と岡倉の提灯持ちをして、千代の本音に、がっくりの寅さん。絶好のチャンスを逸す。野球で言えば見事空振りの三振!。
【私の評価】快い佳作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→②。
1972年(2012/2/TV録画観賞=再見).日(松竹)[監督]山田洋次[撮影]高羽哲夫[音楽]山本直純[主な出演者★=好演☆=印象]★渥美清。☆八千草薫。☆米倉斉加年。☆田中絹代。倍賞千恵子。前田吟。松村達雄。☆三崎千恵子。太宰久雄。笠智衆。佐藤蛾次郎。津坂匡章[上映時間]1時間35分。
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