英国王のスピーチ

後味も爽やかな力作である。白内障手術で涙腺も緩んだのか?ナチス・ドイツとの開戦を前にしたキングス・スピーチには感涙も催した。
当初ライオネル・ローグはヨーク公に言い放つ。“信頼と対等な立場”に徹すると。予想される困難と闘いつつ最後までこれに徹した実践力こそ感動の源だろう。
新国王の吃音を治療する具体的な方策も興味深い。国王好物の煙草まで排する徹底ぶり。独り言に吃音は無いという事実を認識させる確かな説得力。「敵前逃亡は負けだぞ」と、時には厳しく。“To be or not to be……”と、ハムレットの有名な台詞を読ませる。
音を上げる国王に叱咤は続く。「命を賭けた真剣勝負」と、録音機に音声を入れる。「王族に対して遠慮はないな」の声など、寅さん流に言えば“上の空豆”。左利きを無理に右利きに直された国王の過去が明るみに出るところなどは興味深い。
父の死→兄の退位。世の中は皮肉なものである。好むと好まざるに拘わらず英国王の地位は、新ジョージ6世を誕生させるのである。時の流れには逆らえぬ。何事に於いても。と痛感した映画でもあった。
聞こえ来る旋律は、モーツァルト/ピアノ協奏曲第26番「戴冠式」(K.537)の一節だろう。ニ長調の明るい雰囲気や、雅やかなピアノが、新国王の誕生を祝福するかの如く爽やかだった。
久し振りに観た私好みの映画。1950年代にはこのレベルの作品がキラ星の如く在ったような気がする。
【私の評価】紛れもない秀作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→①。
2010年(2011公開)(2012/3/8TV録画観賞=初見).英/豪(GAGA)[監督]トム・フーパー[撮影]ダニー・コーエン[音楽]アレクサンドル・デスプラ[主な出演者★=好演☆=印象]★コリン・ファース。★ジェフリー・ラッシュ。ヘレナ・ボナム=カーター。ガイ・ピアース。ティムシー・スポール。デレク・ジャコビ。ジェニファー・イーリー。マイケル・ガンボン[原題]THE KING'S SPEECH[上映時間]1時間58分。
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