男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎

坊さん姿のよく似合う寅さん。心の底から笑わせるその秀抜な演技力もさることながら、柴又へ帰る妹一家に地元の松茸を「持って帰れ」と駅まで駆けつける彼の姿に、ただ単なる喜劇役者だけではない実力が溢れている。
そんな彼に対して、朋子が抱いて来た情愛が、そっと観客に伝わって来る。
全編の中で、極く自然に2~3度奏でられるシューベルトの弦楽五重奏曲「鱒」がピッタリと合っている。その相応しさは、音楽は言葉のない台詞だと実感させる。
旅情、人情、喜劇のほかに、遺産相続を巡る兄弟の葛藤は、現在の社会にもそのまま通じる社会の課題でもある。
シリーズの中では上位を占める予感がする。中井貴一の若いこと。
【私の評価】風情豊かな佳作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→①。
1983年(2012/6/23TV録画観賞=再見).日(松竹)[監督]山田洋次[撮影]高羽哲夫[音楽]山本直純[主な出演者★=好演☆=印象]★渥美清。★竹下景子。中井貴一。杉田かおる。松村達雄。梅野泰靖。☆八木昌子。穂積隆信。☆長門勇。☆倍賞千恵子。☆前田吟。★三崎千恵子。太宰久雄。笠智衆。佐藤蛾次郎。吉岡秀雄[上映時間]1時間45分。
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