初恋のきた道

21世紀も寸前の映画にしては珍しいモノクロかと思って見ていたら、パッとカラーになった。そこから描かれて行くのは過去の世界。普通はこの逆(カラーで現在。モノクロで過去)が多い。でもこちらの方が新鮮に見えた。
エピローグで唱えられる“四季は春夏秋冬。天地は東西南北”の雄大な撮影に眼を奪われそう。日本では一部の地方でしか見られなくなった“麦畑”のそよぎ。舞台は中国の東北地方だろう。
かってのドラマ「大地の子」と同じ質素な内装。瓦が一部砕けた屋根。すべて地味。OK!。すべてシンプル。レシピにもシンプルだからこそ美味しいものがある。坦々と流れるナレーション。
貰った髪留めを無くし、はつ恋のきた道を探しに戻るディの健気さに感動する。だけど、どうしても見つからなかった。
入口の両側に保存用の南瓜が干してある我が家に辿り着いたディ。ふと見下ろした物陰にそれが落ちていた。「ホッ」思わず感情移入させる巧さよ。それはチャンユーの為に作った餃子のお礼にと、彼が呉れた大切なものだったもの。

物の価値は金額ではない。例えそれが質素な物でも、人の思いが、心が、魂が籠もった物は、お金では買えないのだ。
餃子を運んだ際に落として壊れた瀬戸物容器。修理するより買い換える方が安いのに、敢えて前者を選ぶ訳が此処にある。
エピローグ。夫の亡骸を我が家に運ぶ費用4000元をサッと出す孝行息子のユーシェンだった。
吹雪の中を葬列は続く。「葬式用の布だけは私が織る」と、修理した機織りで今は老いたディが織った長い列が…。

そんな彼女が新築なった学校に日頃溜めたお金を寄付する。かって亡夫が教鞭を執っていた天井の梁に巻かれた赤い布が無言で語る。ケチと質実剛健は違うのだと。
今や日本を超え世界第2位の経済大国に成長した中国。その基には、ディの初恋のきた道のように、中国の人が培って来た道があるのかもしれない。
勤勉の道。大事な人との触れ合いの道。大切な家族との繋がりの道。が。米中合作ということに好感。かって亡夫が生徒たちに教えていた言葉が心に響く。
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人 世に生まれたら志あるべし
書を読み字を習い見識を広める
字を書き計算ができること
どんなことも筆記すること
今と昔を知り天と地を知る
( 中 略 )
どんな出来事も心にとどめよ
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同じ言葉が洩れてくる新築なった学校。
最後に新しい言葉が響いてきた。
「目上の人を敬うべし」と、、。
【私の評価】紛れなき秀作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→①。
1999年('20公開)(2012/7/20TV録画観賞=初見).中/米[監督]チャン・イーモウ[撮影]ホウ・ヨン[主な出演者★=好演☆=印象]★チャン・ツィイー。チョン・ハオ。スン・ホンレイ。チャオ・ユエリン[原題]我的父親母親/THE ROAD HOME[上映時間]1時間29分。
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