ヤコブへの手紙

堅く閉ざされていたレイラの心が、ヤコブの前で溶け始める瞬間。それは、太陽の光に照らされた氷山が、流氷に変わる時であった。
忍耐。寛容。根気。慈愛。そういった単語が頭を掠め、通り過ぎていく。これは素晴らしい人間ドラマだ。
登場人物は三人だけ。といってもいいだろう。そのうち一人は郵便配達人だから、実質はレイラとヤコブの二人だけ。
音楽はプロローグとエピローグでピアノ曲が流れるだけだったと思う。確か。
レイラは特赦で出所した元終身犯の女性。ヤコブは分厚い聖書を丸暗記している盲目の牧師。彼の許へ来る手紙を読んで聞かせる役に飽きた彼女は、郵便配達人が届ける手紙を捨ててしまう。
長い間の獄中生活で荒んだ心が、蟷螂の様に釜を持ち上げてきたのだ。ヤコブの眼前に翳すナイフ。動じない彼。盲目を確かめて盗むヤコブの金。しょっちゅう蒸かす煙草。
そして何時しか来なくなる手紙。その代わりにレイラ自身の悩みを話す時が訪れたのだった。
ネタバレしないよう此処でストップ。北欧の太陽は慈愛に満ちて、人間に生きとし生きる道を導くように明るかった。
【私の評価】秀作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→②。
2009年(11公開)(2012/7/21TV録画観賞=初見).芬蘭[監督]クラウス・ハロ[撮影]トゥオーモ・フートリ[音楽][主な出演者★=好演☆=印象]★カーリナ・ハザード。☆ヘイッキ・ノウシアイネン。ユッカ・ケイノネン[原題]POSTIA PAPPI JAAKOBILLE[上映時間]1時間15分。
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