二等兵物語 女と兵隊 蚤と兵隊

映画の冒頭で1945年6月と出た。反射的に私は丁度其の年月に、誇りを抱き皇国の礎となられた叔父の霊前に跪く。
映画では、激減する国内成人男子に赤紙が飛び交っていた。
その赤紙の事を「人間の差し押さえ」と表現する街の発明家、古川凡作にもそれが翔んで来た。
暫くして「グラマン」という台詞を聞いた。想いは下校途中に機銃掃射されたあの日に戻る。
そのような映画の中にも、やがて流れる“♪故郷の廃屋”。
昭和のあの頃も、平成の今も、その美しい旋律は変わらぬ。
だけど何と異なる此の心境。
往事は悲愴美。現代は優雅美。
多くの二等兵と、多くの古参兵の、度重なる対立と葛藤は、調和という二字を求むべくもなく。
絶望に近い心境の中で、古川凡作は炸裂する。
「撃つぞ」。
「二等兵を除く皆其処へ並べ」。

たとえ映画の中でとはいえ、キリッと覚ゆる此の快感。
久し振りの再見とはいえ、私の所感は何十年前の初見のあの時と全く同じだった。
こんな映画は珍しい。
土砂降りが稍小康状態となった今日。8月14日。
明日は、1945年8月15日のあの日と同じ紺碧の空が見られるのだろうか。
【私の評価】準佳作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→③。
1955年(2012/8/2TV録画観賞=再見).日(松竹)[監督]福田晴一[撮影]片岡清[音楽]原六郎[主な出演者★=好演☆=印象]★伴淳三郎。☆花菱アチャコ。宮城野由美子。山路義人。関千恵子[上映時間]1時間35分。
スポンサーサイト