間諜X27

如何にもクラシカルな作りである。当然だろう。八十路のこの私が未だ垂乳根の胎内を出でぬ前の映画だ。一言で言えば、映画の教科書を観ているようだった。
音楽の用い方が素晴らしいのがその要因。といえば過言だろうか。
愛国の人ハイドンが作ったオーストリア国家。それは、間諜X27の愛国心を見事に象徴していたと言える。
そのオーストリアの母なる河ドナウ。といえば、浮かぶ二つの著名曲。仮面舞踏会で流れる「美しく青きドナウ」もさることながら、この映画を支えているのは、ヨジフ・イヴァノヴィッチ作曲の「ドナウ河のさざ波」である。
これも好きな曲だ。確か「ジョルスン物語」でも出て来たと記憶している。
ピアノが弾ける間諜X27は、要所要所で爪弾く音色で、見事に自己の心境を発露していた。
無論間諜X27を演じるマレーネ・デートリッヒ自身の演奏ではないだろうが、映像はそのような邪念を感じさせぬ撮影と云える。
シンプルな作り故に余計にネタバレを避けたい。とすれば、文章力未熟の私である。この辺りで終えざるを得なくなる。
終わりに一言。見事なラストシーンである。悲愴。感動。そして、冒頭附近で間諜X27が吐いた台詞が、これまた見事な伏線を形成し集結の時を迎える。
【私の評価】意欲感じる佳作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→③。
1931年(2012/8/18TV録画観賞=初見).米(パラマウント)[監督]ジョセフ・フォン・スタンバーグ[撮影]リー・ガームス[音楽][主な出演者★=好演☆=印象]★マレール・デートリッヒ。ヴィクター・マクラグレン。ワーナー・オーニンド。ルー・コディ[原題]DISHONORED[上映時間]1時間31分。
追伸
下の画像は昨日午前5時29分撮影の東雲。

間諜X27は其の時、このような映像を見た様な気がしてならない。
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