男はつらいよ 知床慕情

今回は何時もとは稍趣を異にする。
一つは冒頭寅さんの夢が無い。桜花繚乱の江戸川堤。矢切の渡し。寅さんが降り立つ。ぞくぞくする。いょ~寅さんツ!。
もう一つは寅さんとマドンナ以外の恋があること。これがポイント。この第38作のレベルをグイと押し上げたから。
上野獣医「君は日本の農政についてどう考えるか」。
車寅次郎「へえー!?」。
三船敏郎扮する堅パン獣医と、淡路圭子扮する「はまなす」経営者との慕情は、流石ベテラン同士の円熟味が、知床の空と海と野山に溶け込んでいた。
特に三船敏郎さんは、竹下景子扮する娘、りん子への親心もそっと馴染ませる名演である。
斯くて、おいちゃん入院に発したシリーズ第38作は、医者への手付けや同室患者への心使いなど、寅さん特有の心根で笑わせながら高揚してゆく。
それは大自然知床の大ロマンでクライマックスを迎える。森繁久弥さんの「♪知床旅情」が雰囲気タップリに流れる。これが当シリーズ中でも上位の地位を確約する源ともなった。
結びは例によって、りん子への恋心がばれかけ、岐阜へ赴く寅さんの旅愁で静かに帷は降りてゆく、、。

オシンコシンの滝が懐かしい。オホーツクに注ぐ二筋の滝よ。冬には閉ざされる海辺の路よ。かって旅した知床の風景にも酔った知床慕情であった。

【私の評価】優れた作品です。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→①。
1987年(2012/8/23観賞=再見).日(松竹)[監督]山田洋次[撮影]高羽哲夫[音楽]山本直純[主な出演者★=好演☆=印象]★渥美清。☆竹下景子。★三船敏郎。★淡路圭子。赤塚真人。イッセー尾形。倍賞千恵子。前田吟。吉岡秀雄。下条正巳。三崎千恵子。太宰久雄。笠智衆。佐藤蛾次郎。美保純。[上映時間]1時間47分。
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