1972年公開の映画 My Best10
【1】
まえがき
明るい話題に湧き、暗い話題に蒼然とした年であった。
札幌で冬季オリンピックが開かれた。
尻餅をついても零れる笑顔で応えたジャネット・リン選手の明るさは忘れられない。
日本映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」でも知られる大事件が起こったのもこの年。
テレビに釘付けされたこの年の2月を思い出す。
【2】
日本映画
相変わらず鑑賞数不足。ベスト10は不可能ゆえ、ベスト5とする。【各画像クリックで本文】
第1位
「忍ぶ川」
ひたすらに描く肉親愛に魂が震撼する。志乃。貧困家庭に育ち今は「忍ぶ川」に働く。彼女が哲郎から聴いたの家族の話は悲惨だった。お互いの肉親も含めて必然的に通い合う愛が痛いほど理解出来る。雪国の慣習に従い素裸の初夜を迎える二人。斯くも美しく、必然的で、情感溢れ出、夢溢れる様な情愛シーンを他に見たことがない。屋外に響く馬橇の鈴の音。過去の不幸からの脱却と、希望の未来に羽ばたく二人の姿。感動的な幕切れであった。
第2位
「軍旗はためく下に」
「単なる反戦の叫びだけに留めぬぞ」脚本を書いた新藤兼人さんの霊が叫んでいるようだ。真実は自殺らしい越智は交通事故で死んだ。天皇陛下に何かを訴える様に死んだ富樫。彼と共に処刑された小針の遺族は広島原爆の犠牲に。真相は不明のヴェールに包まれた儘終わりを告げる。現在をカラー、過去をモノクロとする手法は多く見られるが、これほどその対比が顕著に浮かび上がる作品は数少ない。
第3位
「故郷」
「大きいもんてなんやねん!」最後の仕事の日、夫の吐き捨てる様な言葉が悲しすぎる。流れゆく社会の厳しさが風光明媚な瀬戸の小島に痛烈に木霊する。夫婦が石船を諦める日、息子も乗せて漕ぎ出す朝焼けの瀬戸内は、美しくも儚い哀しみに充ち満ちる。楽しかりし宮島での音楽祭に想いを耽る妻の心を癒やすようにも映った。山田洋次監督の魂も震えているかのようだった。
第4位
「あゝ声なき友」
西山民次は隊で唯一の生還者。彼は託された戦友の遺書を渡すため遺族を捜し求める旅に出る。夜の女に堕ちていた妻。愛情が醒めていた妻。刑死した弟。涙する親も居れば、子よりも永らえ憎まれる親も居た。戦友の妻を奪った男。生きていた戦友。これらから学ぶ戦争の罪悪。目的達成に7年を費やした民次の姿に、人間として為さねばならぬものは何かと教えられる。
第5位
「旅の重さ」
様々の事情で四国遍路の旅に出た16才の少女は多くの体験をする。
痴漢と出逢った宇和島。
旅芸人一座と行動を共にした足摺岬。
大自然を満喫し性に目覚める彼女が居た。
再び歩む一人旅。
魚の行商人との出逢いが彼女の運命を決める。
ロードムービーは人生を教えてくれる。(本文なし)
【3】
外国映画
日中国交回復の年だった。現在の状況に胸が痛む。
洋画界は、アメリカ映画が元気を取り戻したような年だったと思う。
'72公開作 My Best10【各画像クリックで本文】
第1位
「ゴッドファーザー」
僭越ながら私のブログ第1号のこの映画は、社会の裏面を描きながら此の魅力の根元は何?。燦々たるアウトドアの結婚パーティー。薄暗いインドアのドン。対比が見事。暗黒世界に興味の長男と、父の生き方に否定的な三男マイケル。運命の神を思う。賭博や酒や女や労働組合には手につけても、麻薬にだけは手を染めぬドン。仕事を終えたドンは外に出て娘と踊る。この時に流れるニーノ・ロータの甘みあるテーマ音楽。その後も随所で奏でられ、可成り殺伐なこの物語を癒やしてくれるのだ。
第2位
「ダーティハリー」
スマホどころかケータイも無い時代。有線電話の使い方が巧い。地下鉄に乗るハリー。クローズアップされる黄色いバッグの不気味さ。
上司が言う。
「警官が足にナイフとは」これが活きた。
そして、その反動が来る。
ストーリーは更に高揚する。ハリー得意の台詞の結果は、2回目は、1回目と異なっていた。堅パン上司に辞表を叩き付ける一匹狼刑事ハリー・キャラハン。かっこいい!。
第3位
「時計じかけのオレンジ」
いきなり解読不明の語りに驚愕。そもそも「時計じかけのオレンジ」の解釈が「何を考えているか解らない奴」という意味らしい。宜成るかな。内容がまた凄い。超暴力の連続。ベートーヴェンの第九が好きというのに。キューブリック監督は「この映画を観てどう思うかは自由」と仰ってるよう。私は「これは彼が35年後の世界を予言し警告を発したのではないか」と。最近連鎖反応的に連発する凶悪犯罪を思うにつけ、その感を深くかる次第。
第4位
「フレンチ・コネクション」
マルセイユとニューヨークを股にかけ、仏語と英語が飛び交う。高架線路の上下をクロス・カッティングするシークェンスが有名だが、他にもなかなか鋭いシーンがある。地下鉄尾行シーンの一例。市民を巻き込むビル屋上と地上の銃撃戦等、何時しか刑事の心情で観ている僕が居た。
第5位
「キャバレー」
1931年のベルリン。ヒトラーの足音が次第に高揚して来る時代。一ナチ党員の「♪~我等の天下」に和す人々が次第に増える。やがて全員起立。大合唱に変わる。
圧倒されそうになるその影で「私はユダヤ人…」のナタリア哀し。彼女とは対照的なサリーが、。ブライアンに差し伸べるしなやかな指。マニキュアの色は何時もの緑ではなかった。
第6位
「恋」
西洋印象派画家の絵画を想わせる数々の風景に感嘆の声を挙げた。音楽も快い。貴族趣味が見え隠れする此処モーズレイ家を背景に繰り広げられる恋模様は自然流。性に目覚めるレオ少年の眼を通した手法が新鮮。回想形式も巧みに、「これが1970年代の映画か」と驚かせつつ大団円を告げる。
第7位
「フレンジー」
ヒッチコック作品は、ネタバレ防止のため上手く書けない。が、トラックに満載したジャガイモ袋から、ジャガイモ+αが、深夜の路上に転がり落ちるシークェンスはなかなかの見もの。
ところで、わぁ~、こんな所に居られたとは、ヒッチコック先生!めつけ~!。
第8位
「リスボン特急」
見せ場は首領のシモンをエドアール・コールマン刑事が射殺する戦慄のシーン。シモンの死体から銃器は出てこなかった。コールマンを錯覚させたシモンの動作は覚悟の上だったのだ。ラストで、バック窓に凱旋門が写る車のハンドルを握るエドアールの呆然とした表情は見事である。
第9位
「ラスト・ショー」
此処テキサスの田舎町でサムが経営する映画館、玉突き、スナックには何時も若者が集まる。
スクリーンにエリザベス・テイラーが写っている。『花嫁の父』だ。
後はこの町の青春群像の生き様がテンポ良く画かれていく。当然性の発散描写は多い。
が、そこに織りなす人間模様に嫌みが無く、納得性さえ感じるのは、憂鬱モードのモノクロ撮影のせいだろうか。
第10位
「ニコライとアレクサンドラ」
4女アナスタシアの悲劇に少しでも焦点を当てられなかったか。ラスプーチンが登場する。その昔「怪僧ラスプーチン」というフランス映画を観たことを思い出した。この史上名高い怪物も、此処では何の個性も出ていない。このようなところが凡作の域を出ないと思う由縁かもしれぬ。
**The End**FIN**FINE**
まえがき

札幌で冬季オリンピックが開かれた。
尻餅をついても零れる笑顔で応えたジャネット・リン選手の明るさは忘れられない。
日本映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」でも知られる大事件が起こったのもこの年。
テレビに釘付けされたこの年の2月を思い出す。
【2】
日本映画
相変わらず鑑賞数不足。ベスト10は不可能ゆえ、ベスト5とする。【各画像クリックで本文】
第1位
「忍ぶ川」

第2位
「軍旗はためく下に」

第3位
「故郷」

第4位
「あゝ声なき友」

第5位
「旅の重さ」

痴漢と出逢った宇和島。
旅芸人一座と行動を共にした足摺岬。
大自然を満喫し性に目覚める彼女が居た。
再び歩む一人旅。
魚の行商人との出逢いが彼女の運命を決める。
ロードムービーは人生を教えてくれる。(本文なし)
【3】
外国映画
日中国交回復の年だった。現在の状況に胸が痛む。
洋画界は、アメリカ映画が元気を取り戻したような年だったと思う。
'72公開作 My Best10【各画像クリックで本文】
第1位
「ゴッドファーザー」

第2位
「ダーティハリー」

上司が言う。
「警官が足にナイフとは」これが活きた。
そして、その反動が来る。
ストーリーは更に高揚する。ハリー得意の台詞の結果は、2回目は、1回目と異なっていた。堅パン上司に辞表を叩き付ける一匹狼刑事ハリー・キャラハン。かっこいい!。
第3位
「時計じかけのオレンジ」

第4位
「フレンチ・コネクション」

第5位
「キャバレー」

圧倒されそうになるその影で「私はユダヤ人…」のナタリア哀し。彼女とは対照的なサリーが、。ブライアンに差し伸べるしなやかな指。マニキュアの色は何時もの緑ではなかった。
第6位
「恋」

第7位
「フレンジー」

ところで、わぁ~、こんな所に居られたとは、ヒッチコック先生!めつけ~!。
第8位
「リスボン特急」

第9位
「ラスト・ショー」

スクリーンにエリザベス・テイラーが写っている。『花嫁の父』だ。
後はこの町の青春群像の生き様がテンポ良く画かれていく。当然性の発散描写は多い。
が、そこに織りなす人間模様に嫌みが無く、納得性さえ感じるのは、憂鬱モードのモノクロ撮影のせいだろうか。
第10位
「ニコライとアレクサンドラ」

**The End**FIN**FINE**
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