愛の調べ

ロベルト・シューマンとクララ夫妻。それにヨハネス・ブラームスが絡む音楽と愛の伝記は著名。映画はその要点を効果よく絞って描いていると思う。クララの父ヴィークを巡る裁判事件なども史実に忠実だ。
また音楽伝記映画は、例えその断片でも登場音楽が楽しみ。そういう観点からは、稍不満が残る気もする。が、甘味ながらも優美な旋律、トロイメライを伏線に用いた演出は巧い。
いやそれよりも、これは寧ろ人間の愛に視線を置いた映画。それも、夫と、ブラームスの狭間で、自己の人生哲学に生き抜いたクララ夫人に焦点を当てていて爽やかである。
シューマンとの間に設けた7人の子を巡る、召使いベルダの挿話も地味ながら微笑ましい。
クララを演じるキャサリン・ヘップバーン。音楽映画でよく目にするところの、手先だけが写る場面が少ないのが特徴。彼女全身で弾いているのに好感。
たとえ聴こえてくる音楽は別の人の演奏であったとしても、彼女の手の動きだけは確かである。
あの指のしなり…。可成りの練習の賜物だろう。とも推察したりしてみたが?。
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