大人の見る絵本 生れてはみたけれど 1932年.松竹映画

このサイレント映画が公開される5ヶ月前に私は生まれた。当然リアルタイムでは見て居らず。けれども物心付いた数年後に見聞した風俗習慣は、この映画に登場するそれと大同小異だった。懐かしさに思わず画面に見入った。
知恵の輪。けん玉。おひつ。エプロン。甲乙丙丁。爆弾三勇士。アイロン二股。活動写真。針仕事。右書き。……。
電車の往来が激しすぎるのだけが不自然に感じたけど、これは微細な事柄だ。それにしても当然聞こえない電車が走る音や、冒頭の自動車の車輪の回転音に、映画はやはり映像+音響だなぁと思う。
この映画から思うこと。それは、親と子の心の葛藤と交流を通じて育まれる家族愛に尽きる。
生まれてはみたけれど、スマホを筆頭とするソーシャルネットワーク時代に様変わりした現在。親子の対話は少なくなっていやしないかと、老婆心が持ち上がる。
昔は卓袱台を囲む家族の対話があった。名子役だった突貫小僧とその兄が、父親に自分の考えを堂々と主張する80年前に、うんうんと頷く。こんな時代は最早や戻らぬのだろうか。80年という時の流れは、一口で言えば、感無量しかない。
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