わが谷は緑なりき

50年を生きたウェールズの谷にいま別れを告げるヒューは様々な思いを馳せ巡らせていた。「石炭の値が下がったんだ」賃下げの通告を受ける熟練炭坑員の兄たち。締め切られた門塀に山と溢れる炭坑員。「低賃金で失業者が働きだした」「組合を作ろう」ちっぽけな社宅のような同じ作りの家が建ち並ぶ谷間の道を、蛇のように縦列で進む労働者の群れ。斜めの線を描く谷を全編に脈動させたアーサー・ミラーのカメラは、さながら宗教画でも見ているようだ。
モノクロならではの光りと陰で炭坑町が生きているが如くに写されている。ストライキは22週続く。雪の舞う谷に空虚と絶望が満ち、ストに反対する父は裏切り者扱いされる。集会で母は抗議する。窓に小鳥が訪れる頃、和解の大合唱。アルフレッド・ニューマンの音楽は深い印象を残す。クリフィド牧師の努力とと父の協力でストは解決する。
それでも産業革命による余剰人員は増える。兄弟たちはアメリカへ行く。学校での虐めに耐えたヒューは父の励ましでこれに勝つ。長兄が事故死する。母は既に他界。他の兄は外国。落盤事故で父が亡くなった。淡々と語られる叙事詩が終わりを告げる。1941年アメリカ映画