男はつらいよ 寅次郎紙風船

「寅さん映画は皆同じに見える」という声を聞く事がある。見方によればそうかもしれない。パターンは決まっている。それは「刑事コロンボ」にも言える事だけど。よく吟味すれば、一作、一作、味がある。薄味。濃い味。甘口。辛口。等々。
さてこの第28作は何口?。パターン通り、寅さんが夢から醒めてオープン・クレジット。題意の冒頭シーンの切れ味佳し。幼い時、置き薬屋のおじさんが、おまけに置いていった紙風船を思い出した。あれはサイコロ型だったなぁ。これは懐かし味だ。
これまた懐かしい同窓会。寅さんの大暴れシークェンスが秀逸だった。他でも見たような気がした。同じ山田洋次作品「おとうと(リメイク)」で笑福亭鶴瓶が暴れていた。これは辛口?。

メイン・ディッシュは、ダブル・マドンナで濃い味が付く。メイン・マドンナは音無美紀子だろうが、サブの岸本加世子の個性味が巧い。九州の秋月。うらぶれた旅籠の相部屋。悪酔い醒めて、毛布畳んで姿消す。ところなど流石。
「夜明」の看板が寂しく灯っている。相部屋の相手が女性と聞いた寅さんの表情の巧い事!。「フーテンとは故郷を捨てた男」の殺し文句が愛子(岸本加世子)との雪解けを生む。名シーンだ。

愛子の兄の威勢の良さも燻銀。光枝(音無美紀子)の夫の死後…。人が変わる寅次郎。奮闘努力の甲斐も無く、不採用通知の手紙を寅さんに見せ聳る家族の心情は泪味。
光枝の傍らに寄りつけず、もじもじ、そわそわの寅は出ていく年の暮れ。焼津の正月。愛子のサクラは元気味。
【私の評価】佳作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→①。
1981年(2012/1/23TV録画観賞=再見).日(松竹)[監督]山田洋次[撮影]高羽哲夫[音楽]山本直純[主な出演者★=好演☆=印象]★渥美清。音無美紀子。★岸本加世子。倍賞千恵子。下絛正巳。三崎千恵子。前田吟。太宰久雄。吉岡秀隆。☆地井武男。笠智衆。佐藤蛾次郎。犬塚弘。小沢昭一。前田武彦[上映時間]1時間41分。