男はつらいよ 寅次郎恋やつれ

この「柴又慕情」の続編は、父と娘の情愛に最大のスポットを当てたのが、優れた作品となった要因である。歌子は主張する。「いくら心で思っていても、それが伝わらなかったら、それは愛情とはいえない」と。浮き彫りされる、ぎくしゃくとした実父との関係。
「それを何とか改善してあげたい」。善人の寅さんとサクラ兄妹の意見は一致した。「逢いさえすればいいのだ」。二人の懸命の努力が実る。歌子の父、来る。
娘にそっとお金を渡し「箪笥の衣料を適当に持って来た」。感極まる歌子。父娘和解の素晴らしさはなおも続く。
「いや、何も君が謝る事はない。謝るのは多分私の方だろう。私は口べただから誤解される事が多くてな。私は歌子が信じた道を真っ直ぐに歩んでくれた事が嬉しくて、ほんとうに嬉しくて……」ここで遂に絶句する父親。
同じ父親の目線で見ている私も泣いてしまった。宮口精二の名演で、実に感動的なシークェンスに仕上がっている。
さくらはその後も活躍する。「本当に歌子さんのこと思ってるの!。家でブラブラして居たら良いって、お兄ちゃんが歌子さんに居て欲しいからよ!」。倍賞千恵子、奮闘努力の甲斐実る。
笑いもふんだんにある。「財布に500円札以上在った事がない」。おいちゃんの言葉に爆笑。寅さんのナポレオンを「ワシントン」には何回見ても大爆笑。
カラーになったばかりの当時のテレビに郷愁。寅さんの代筆をする歌子に幸あれ。
【私の評価】優れた内容です。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→①。
1974年(2012/2/17TV録画観賞=再見).日(松竹)[監督]山田洋次[撮影]高羽哲夫[音楽]山本直純[主な出演者★=好演☆=印象]★渥美清。☆吉永小百合。★宮口精二。高田敏江。★倍賞千恵子。前田吟。松村達雄。三崎千恵子。太宰久雄。笠智衆。佐藤蛾次郎。中村はやと[上映時間]1時間44分。