地上最大のショウ

偉大な最高娯楽作品が、屁理屈、小細工、小生意気、独断偏見的な芸術作品を蹴飛ばした。なんと言ってもサーカスの華やかな描写が目を奪う。百花繚乱とか絢爛豪華とかいう言葉はこのことをいう。極彩色と中間色を鏤めた衣装や器具設備道具類の鮮やかさ、艶やかさ。同じ場面が二度とは出ない多彩な曲芸やショウの賑やかさ、面白さ。興奮する画面の観衆と共に思わず連帯感を生じてしまう吸引力はたいしたもの。
「あのミニ象のパレードに笑わぬ人はよほどの旋毛曲がりだ」と言ったら怒る人が居るだろうか。舞台裏、興業後の後始末、次の興業地への大移動、到着地での設営風景なども飽きない。漸く天幕を設営し終えて星条旗が揚がるショットなど、高峰を征服した瞬間にも似た感動を伴うぐらいだ。ロマンスや、サスペンスや、人情さえも盛り込んで、飽きさせることはない。
転覆した列車から多くの猛獣が出てくるところなどスリル満点。刑事が「立派だった」とバトンズに握手し、手錠をはめるショットは、仮装に徹したままで、表情と感情を演じたジェームズ・スチュワートの好演で秀逸。大事故にもめげず、テント無しの青空興業を決行するサーカス団の大パレードで大団円となる。スーパー娯楽映画として古今未曾有。私はこの映画により映画の楽しさを知った。1952年アメリカ映画