男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく

冒頭恒例の寅さんの夢。今回は宇宙もの。この年「未知との遭遇」が公開されている。その年、その時の話題作を上手く利用するセンスは佳い。そういえば、♪UFO~のピンク・レディ人気絶頂期でもあったのか。
目覚めれば、帝釈天の門前。ご前様が、踊り子達の群に優しく語りかけている。今回は浅草の劇場で活躍する彼女らの踊りと歌がふんだんに楽しめる娯楽編の感有り。

シリーズ恒例の寅さん旅の場面もある。今回は九州の何処かの温泉。フランソワ・トリュフォーの「突然炎のごとく」に登場する橋を連想させる俯瞰風景。
橋上を歩いている寅さんがちっぽけに写っている。然し乍ら、上にカメラを向けて撮った被写体は偉大に見える。わが道をゆく寅さんが…。映画は映像の芸術を実感する。

この鄙びた田舎に、そんな寅さんの弟子が居た。上京した留吉は、寅さんと共に浅草の舞台に熱中する。扮する武田鉄矢は、「幸福の黄色いハンカチ」の欽也を思わせる。
「オレが相手を気に入るか。相手がオレを気に入るか」~「女に振られたら、じっと耐えて、背中を見せて、去って行くのが男」と諭す師匠寅さんに鍛えられる役柄に嵌っている。
マドンナの紅奈々子に扮する木の実ナナは、得意の歌と踊りで、寅さん師弟目線を通して、男性観客を楽しませてくれる。
ひとつだけ愚痴をこぼすのを許して貰えれば、劇場と、とらやを往復し過ぎる。「団子ください」と駆け込んだかと思えば「踊りの時間が迫ってるわ」と慌ただしく戻る。そして直ぐに彼女の後を追う寅さん。“わが道をゆく”のだから、もっと落ち着こうじゃないか。ねぇ、寅さん。エラソウナコトヲイッテ、ゴメンナサイ。
でも、+αを発見出来なかったので【私の評価】中の中。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→③。
1978年(2012/3/27TV録画観賞=再見).日(松竹)[監督]山田洋次[撮影]高羽哲夫[音楽]山本直純[主な出演者★=好演☆=印象]渥美清。木の実ナナ。☆武田鉄矢。倍賞千恵子。前田吟。三崎千恵子。太宰久雄。☆笠智衆。佐藤蛾次郎。[上映時間]1時間43分。