わが生涯のかがやける日

朝ドラ「梅ちゃん先生」の背景は戦後。当時の実写モノクロ画像を断片挿入したりして補っては居るものゝ、やはり何処か物足りぬ。その点に於いては、当時に撮られた此の作品は実写映像が無くても充分。往事の風俗や慣習なり習慣等に自然感がある。
終戦前夜。或る大物政治家を暗殺した青年将校が、怒れる娘に刺される。巧みな伏線を敷いたプロローグから、一気に3年後の本編へ。
父亡き娘節子は、悪徳ボス佐川が運営するキャバレーに居た。かっての鬼検事平林が彼女の義兄。且つ佐川の庇護下に在るという設定は如何にも作り話めく。その上、節子が其処で遭遇した青年があの時の将校敬太だったとは、更に拍車が掛かる。
果たせる哉。先は読めるが、此に新聞記者高倉を絡ませた話は娯楽性充分で面白い。題意は終盤で分かる。
此の前年に「安城家の舞踏會」を撮った吉村公三郎監督が、その時の出演者でもある滝沢修や森雅之、清水将夫らをその儘従えて撮って居る。息が合ったキャストで見応えはあり。かっての李香蘭、山口淑子も懐かしい。
が、作品としては甘味なハッピーエンドが個人的には不満。「安城家…」に軍配を挙げたい。吉村公三郎監督は「五人の兄妹」(1939年)がピークだった感を受ける。
【私の評価】佳作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→③。
1948年(2012/4/27TV録画観賞=初見).日(松竹)[監督]吉村公三郎[撮影]生方敏夫[音楽]木下忠司[主な出演者★=好演☆=印象]森雅之。山口淑子。★滝沢修。★宇野重吉。加藤嘉。清水将夫。井上正夫[上映時間]1時間41分。