アイズ ワイド シャット

この映画に対する事前知識は“スタンリー・キューブリック監督の遺作”という事だけだった。でもそれが「観たい」という衝動を起こした。
結果は、「これが彼の遺作か」と一瞬だけだが少しだけ驚いた。私が常々批判の言葉を吐く官能的映画だったから。
「時計じかけのオレンジ」がちょっと浮かんだ。でもあの作品には、現世を予言するような迫真性を有していた。
他の作品も「現金に体を張れ」「突撃」「博士の異常な愛情」「スパルタカス」「2001年宇宙の旅」等々、常に何かを考えさせられる彼の作品に駄作は無さそう。
思うに人間の三大欲望は「食欲」「性欲」「知識欲」。この作品はその一つに焦点を当てているのではないだろうか。結局のところスタンリー・キューブリック監督は“夫婦は心身共に仲良く在れ”と言い残したような気もした。
その為には、様々な官能的描写や台詞は必要にして不可欠。常々不必要な描写には批判の的を当てるが、この作品に対しては野暮な言論を吐くものではない。
また性に対する思想が変わって以降、幾多の映画を通じて様々な性表現に慣れて来た神経はこれ以上発する言葉はない。
要は、卑猥感を持つか否かが分岐点。この映画からは感じなかった。ただ同種の官能的描写が目立った「時計じかけのオレンジ」と対比した場合、作品レベル的には劣ると思った。
但し秘密クラブの雰囲気は、猟奇的で、サスペンス雰囲気を有し、ファンタジー風。且つスタンリー・キューブリック作品独特の非凡な撮影が強印象を残したことだけは確かである。
【私の評価】中の上。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→②。
1999年(2012/6/16TV録画観賞=初見).米(WB)[監督]スタンリー・キューブリック[撮影]ラリー・スミス[音楽]ジョスリン・プーク[主な出演者★=好演☆=印象]トム・クルーズ。ニコール・キッドマン。☆シドニー・ペラック。ヴィネッサ・ショウ。トッド・フィールド。。。[原題]EYES WIDE SHUT[上映時間]2時間39分。