ミモザ館

ミモザ館の女主人ルイズの行動を現代感覚で見た場合「なんと甘いのか」「なんとお人好し」に見えるだろうと思った。
1920年代に始まる南仏の物語という背景からも、古色蒼然たる匂いは禁じ得ない。
そんな視点からは、地味で暗くて魅力のない映画かもしれない。
だけど上手くは云えぬが、ジャック・フェデー監督の狙いはそのような世界ではないと思う。此の作品の弱き者、今にも崩れんとする人間の心理描写に当てる焦点は鋭い。
ルイズを暖かく見詰めれば可哀想で堪らなくなる。臨終間際のピエールの求めに応じ、そっと口づけする彼女。だがピエールの口から出た言葉は「ネリー」だった。
彼のために、カジノで稼いだ札束が宙に舞う。その哀れさに、心弱き者、その魂純粋なる人間の“美”を見る思いだった。
ルイズを演じたフランソワーズ・ロゼー。同じジャック・フェデー作品「外人部隊」での、トランプ占いをするブランシュも絶品だった。
また“美”といえば、同監督の「女だけの都」では、木漏れ日映える街並みに丁々発止の男女を描いた映像美も見事だった。
彼は、人間心理と映像の“美”を追求する人だったのかもしれない。

【私の評価】秀作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→③。
1934年(36公開)(2012/6/29VHS観賞=初見).仏(東和)[監督]ジャック・フェデー[撮影]ロジェ・ユベール[音楽]アルマン・ベルナール[主な出演者★=好演☆=印象]★フランソワーズ・ロゼー。アレルム。ポール・ベルナール。リーズ・ドラマール。ジャン・マックス。。。。[原題]PENSION MIMOSAS[上映時間]1時間50分。