日輪の遺産

この映画には、二つのグループが存在する。
その一つは、20人の女子学生と、一人の教師。という集団。
もう一つは、真柴少佐/小泉中尉/望月曹長。という三人の軍人。及び日本軍最高幹部連。並びに伝令からなる軍人のグルプである。
いま仮に前者をAグループ。後者をBグループと仮称する。
この映画は、何れのグループを重きに置いているのか解し兼ねる面もあるが、強いて言えばBグループではないだろうか?。それが私にとっては今一つ共振を伴わない一因になっている。
Bグループで私が最も目立ったのは小泉中尉。マッカーサー元帥に食らい付くその勇姿と、鋼鉄の如き行動には頭を垂れるものもある。がその反面、何故長髪姿?という疑問符が付き纏う。
私の評価では凡作だった「真夏のオリオン」(2009年)での倉本少佐の幻影が、心の中和作用を促進せしめるのだ。
戦時中は「自分の死が無駄でないという大義名分が在れば、結構楽に死ねるものであります」と腹を括っていた望月曹長が、終戦後採った行動には共感するものが残っている。
だか、「グッドラック」。そして沢庵を利用する真柴少佐の人間臭さは認めるものの、堺雅人のあの優しい眼は、最近見た「塚原卜伝」での違和感も重なって、迫真性が稍不足気味に映った。

“七生報国”の鉢巻き姿が、凛々しくも痛ましかった。秘密の荷箱を運ぶ彼女たち。唱う軍歌の替え歌に純真無垢な心を見た。そんな19人の女学生が行き着いた先は…。
この憤懣やるかたない憤り。Aグループの大和撫子たちこそ、もっと前面に、より強く、主役として押し出すべきではなかったのではないだろうか?。
彼女らの清く、勇ましく、美しい生涯の前には、憎き伝令を含むBグループの面々は許より、同じAグループでも、文学の素質を持っていた久枝や、「何時か小説家になってこの時代のことを書け」と言っていた野口先生も些か影が薄くなる。
もっとも「この世は総て舞台。男も女も役者に過ぎない」の名句を残したシェイクスピアの薫陶で描いた作品なのかもしれぬが?。
【私の評価】印象強い佳作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→①。
2010年(2011公開)(2012/7/10TV録画観賞=初見).日(角川)[監督]佐々部清[撮影]坂江正明[音楽]加羽沢美濃[主な出演者★=好演☆=印象]堺雅人。★中村獅童。☆福士誠治。ユースケ・サンタマリア。八千草薫。森迫永依。ジョン・サヴェージ[上映時間]2時間14分。