好人好日

この映画は、2012-05-14 にupした「1961年の公開邦画 My Best10」に、下記のようにランクしている。
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第7位
「好人好日」
これは私の庭が舞台のような映画。リアルタイムで観ているが、今夏に放映予定ゆえ、レビューを控える。
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予定通り先日放映された。以下に再見記。
前述 My Best10第5位も渋谷実監督の「もず」。淡島千景。乙羽信子。川津祐介を此処でも出場要請?直球勝負した渋谷実監督。「好人好日」では得意の変化球勝負に出た。しかも、おぉ~ツ!うん十年間、プレーしている私のグラウンドで…。
大仏さん。戒壇院。五重塔。松。鹿。奈良女子大。地元では著名な書道具店。若草山。大仏殿の甍。春日奥山。お水取りに大松明が駆け上る二月堂の回廊石段。あれは昔陰陽師が住んでいた街並みの筈。それにあの産婦人科の看板は妻が二児を産んだ医院ではないか。…奈良の街並みを愛して止まぬ長岡博之さんの撮影に先ず敬意。
でもあれは半世紀前の風景。五重塔と見事な調和を誇っていた花の松は松食い虫で枯れ、1988年のシルクロード博などでも変化した。この映画で岩下志麻と川津祐介が逢う附近の松も今は無いと思うが、近く確かめに行こう。

話を松から人に戻そう。映画はフィクションゆえ男女共学になっているが、笠智衆さんが淡々と演じている一徹な学者。尾関先生のモデルは、元奈良女子大学教授岡潔さんの筈。昔の偉い人は、その道は深くても社会常識に疎い人が多かった。その典型のような方だったと推察する。それが恰好の映画の素材となった。
笠智衆の自然派演技は円熟の極み。妻役の淡島千景も貫禄。 分けても「生みの親に会ってみたい時ある。それは生んでくれた人への興味だけ」と嘯く娘役の岩下志麻も好感度良好だ。
「慶長年間」を連発する北林谷栄も秋刀魚の味。なんのこっちゃ。これはタイトル音楽が象徴する如く、渋谷監督お得意の、罪がなくて、和やかで、後味爽やかな人間讃歌や。
【私の評価】肩の張らない佳作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→①。
1961年(2012/7/11TV録画観賞=再見).日(松竹)[監督]渋谷実[撮影]長岡博之[音楽]黛敏郎[主な出演者★=好演☆=印象]★笠智衆。★岩下志麻。★淡島千景。乙羽信子。☆北林谷栄。川津祐介。高峰三枝子。三木のり平[上映時間]1時間28分。