男はつらいよ 幸福の青い鳥

このシリーズも第37作。渥美清さんが少し老けて来たような気がしてならない。もしかしたらこの辺りから病魔が忍び寄って居たのだろうか?。万一そうであったとしても、そんなことはおくびにも出さない渥美清さんである事は百も承知。今回も溌剌と、且つ颯爽と演じていく。
寅さんの妹さくらを演ずる倍賞千恵子。「昔は…だったのに、今は…」と呟く1カットにも自然演技派の趣が除く。その短い台詞の中に、成長してゆく満男の様子が綿密に理解出来る。
また、シリーズものならではの味わいも得られる。満男を演ずる吉岡秀雄。開花する将来を予言させるような成長ぶりが随所に伺える。
これまたシリーズ恒例の冒頭の夢。今回は幸福の青い鳥を求めて彷徨い歩く寅さん一族が居た。
その中にも確か混じっていたと思う源公。扮する佐藤蛾次郎ほど此のシリーズで地味な脇役は居ない。たまに短い台詞を発するだけ。常に笠智衆扮する御前様に仕え、寅さんの金魚の糞的存在でもある。
今日も寅さんのお供で葛飾区役所へ。その彼が突然「わぁ~」と一言。寅さんも続いて「わぁ~」。すわ何事?。
カウンターの上に置いてある投書箱がクローズアップされる。
前面に貼ってあった文書は“あなたの声をお聞かせください”。
こんなに声高らかに笑ったことも珍しい。
いつの間にか、すっかりレギュラー・メンバーに君臨した感のある美保純も相変わらず佳い味を出して居る。
にっかつロマンポルノは殆ど観た事が無い。が最近何周年特集とか称する放映があり、その中から彼女が出演していた一作だけ観た。将来開花の片鱗が伺われた。演技派俳優には其の素質、素地があるものなのだ。
こんな助演陣の好演に比べると、ヒロインとその彼氏のエピソードは、まぁまぁといった感じ。心底吐露いまいちの志穂美悦子と、台詞通り「複雑な匂い」がする長渕剛に映った。
「幸せな男が団子でビール飲めるか」の一言が鮮やかな寅さん。
主役は相変わらず健在。例え世界が三角になろうとビクともしない。堂々たる恰幅ぶりである。
【私の評価】中の中。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→③。
1986年(2012/8/22観賞=再見).日(松竹)[監督]山田洋次[撮影]高羽哲夫[音楽]山本直純[主な出演者★=好演☆=印象]☆渥美清。志穂美悦子。長渕剛。☆倍賞千恵子。前田吟。★吉岡秀雄。下条正巳。三崎千恵子。太宰久雄。☆笠智衆。★佐藤蛾次郎。☆美保純。笹野高史。桜井センリ。すまけい。じん弘[上映時間]1時間42分。