馬鹿まるだし
1964年公開[監督]山田洋次[出演]ハナ肇。桑野みゆき(他)

この作品には伏線が二箇所敷かれている。
一つは、ごしんぞさんの為に、安五郎が白木蓮を植える場面。
もう一つは、安五郎が「無法松の一生」の芝居を見るシーン。
要所、要所で写し出される白木蓮。それは、秘かに、ごしんぞさんに恋慕の情を寄せる安五郎の進行役を務めている。
その名さえ、松五郎と一字違いの安五郎の物語は、「無法松の一生」へのオマージュ。
「ごしんぞさん、あっしは汚れております」再婚するごしんぞさんに、その胸中を吐露する今は盲目の安五郎。その背に座るごしんぞさんの右眼に湧く泪。傍らの白木蓮も泣いていた。
桑野みゆき、快心の演技である。
ただそれだけでは単なるお涙頂戴映画。この映画はさに非ず。安五郎の心境の影には、彼のヤミ商売に、凛として意見するごしんぞさんの姿勢を垣間見るからである。
時代背景は昭和6年。私が此の世に生を受ける前の年。戦雲急を告げていた。千人針の風景が、何とも言えぬ悲しい思い出を呼び起こさせる。小学校にあった懐かしい謄写版。此処でも活躍していた。
安五郎を演じるハナ肇さんの背に、ふと、渥美清さんの残像が浮かんだ。
いろんな風情の白木蓮を写した高羽哲夫さん。この映画で撮影の初お目見え。以後「男はつらいよシリーズ全作」を撮り終えて他界される。
同様全作の音楽を担当された山本直純さんと共に、山田洋次監督との名トリオ誕生の作品として印象深い。

この作品には伏線が二箇所敷かれている。
一つは、ごしんぞさんの為に、安五郎が白木蓮を植える場面。
もう一つは、安五郎が「無法松の一生」の芝居を見るシーン。
要所、要所で写し出される白木蓮。それは、秘かに、ごしんぞさんに恋慕の情を寄せる安五郎の進行役を務めている。
その名さえ、松五郎と一字違いの安五郎の物語は、「無法松の一生」へのオマージュ。
「ごしんぞさん、あっしは汚れております」再婚するごしんぞさんに、その胸中を吐露する今は盲目の安五郎。その背に座るごしんぞさんの右眼に湧く泪。傍らの白木蓮も泣いていた。
桑野みゆき、快心の演技である。
ただそれだけでは単なるお涙頂戴映画。この映画はさに非ず。安五郎の心境の影には、彼のヤミ商売に、凛として意見するごしんぞさんの姿勢を垣間見るからである。
時代背景は昭和6年。私が此の世に生を受ける前の年。戦雲急を告げていた。千人針の風景が、何とも言えぬ悲しい思い出を呼び起こさせる。小学校にあった懐かしい謄写版。此処でも活躍していた。
安五郎を演じるハナ肇さんの背に、ふと、渥美清さんの残像が浮かんだ。
いろんな風情の白木蓮を写した高羽哲夫さん。この映画で撮影の初お目見え。以後「男はつらいよシリーズ全作」を撮り終えて他界される。
同様全作の音楽を担当された山本直純さんと共に、山田洋次監督との名トリオ誕生の作品として印象深い。