1973年公開日本映画My Best 7
【1】[まえがき]
半世紀以上日記を書き続けている。それが何になると思う時もある。が身に滲み付いた習慣。一生続くだろう。
この年の日誌をパラパラと捲る。12月20日~25日東北に出張している。
オイルショック発生に伴う担当計画延期の為、仙台の役所通いだった。
38年後に大震災が起こるなど露知らず。青葉通りは平穏そのものに見えた。
だが、内情は物不足となり、トイレットペーパーが高騰した事を思い出す。
この年の公開邦画は辛うじて7本だけ観ている。が、リアルタイム鑑賞作品は少ない。
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【2】My Best7【各画像クリックで本文】
第1位
「戦争と人間(第三部)完結篇」
冒頭近くの生々しい実録フィルムが、当時の中国の首都南京で起こった残酷極まる事実を証明している。幾千の劇映画を以てしてもこの実写を超える訴えは出来ない。身も凍るようなこの撮影フィルムを見て、この作品の目的は達したと私は思った。日本は反省している。が、中国は未だに許してくれないのか。恩讐を超え共存共栄何時の日戻るや。
第2位
「恍惚の人」
世の中は今や核家族化し車社会に変貌。運転免許証を持たぬ老人は買い物も厄介。若人が郊外に移る我が街は映画館も2010年には姿を消した。やたらに目立つは老人介護車。
こんな惨状をテーマにした映画が39年前に出来たのは驚異と思う。
嫁と舅の火花散る熱演は、今は「こちら」に変わっている模様だが、かってTVからよく聞えて来た「凄~い」そのものだった。
遥か昔の1940年に「小島の春」でハンセン病問題を世に問うた豊田四郎監督。思えば常に社会が抱える課題に挑戦した人であった。
第3位
「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」
この年、男はつらいよシリーズは3本も公開された。寅さんの全盛時代だった。
リリーと寅さん。ピッタリと息が合う。これも似たもの同士だからこそ。
「寅さんに初恋した」と言っていたリリーが結婚。寅さんは北海道へ。「働きましょ」と元気よく。
“わすれな草”の意味は途中で分かる。その意味深長。単純なものではない。
第4位
「男はつらいよ 寅次郎夢枕」
「人は誉め合ってこそ向上する」ご前様の言葉が味わい深い。
寅さんの縁談話で、趣味=旅行。職業=出版関係。学校=実力主義。は傑作。
しぶ柿と大根干し風景に、ヴィヴァルディの「秋」が佳く合う。「愛染かつら」では28才だった田中絹代さん。此処では62~3才だろう。
甲州旧家の奥様役で、寅さんに人生を語る。風にそよぐ薄の穂。舞い落ちる落ち葉。山は雪だった。
「先生はお二階でお勉強」千代に扮する八千草薫の心根優し。彼女と岡倉の提灯持ちをして、千代の本音に、がっくりの寅さん。絶好のチャンスを逸す。
野球で言えば見事空振りの三振!。
第5位
「青幻記 遠い日の母は美しく」
三十年経った今も忘れられない母を求めて、沖永良部島を訪れる稔の回想で映画は始まる。
鹿児島での辛い生活に耐えられず、この島に来たあの時。病の伝染を恐れて抱きしめてくれなかった母。踊りの巧かった母・・。
そして逝った母。その情感と、奄美の海の青は限りなく美しかった。
第6位
「男はつらいよ 私の寅さん」
シューベルトの「鱒」は、ショパンの「別れの曲」に…。画家にはクラシック音楽がよく似合う。
ラスト“出版関係?!の職業”に精出す寅さん。傍らの非売品の肖像画は、キリギリスこと、りつ子が描いた絵に違いない。
りつ子に扮する岸惠子。私と同い年。私が社会人ほやほやの安月給取りだった頃、彼女は「ハワイの夜」で鶴田浩二と水着姿で抱擁する看板スター。
この映画の観客動員数も250万人に迫る盛況だった。イヴ・シャンピ監督との離婚はこの映画の2年程後。やはり故国の魅力は捨て切れなかったのだろうか?。
第7位
「戒厳令」
背後に浮かぶ5.15事件も。写し出される昭和初期の暗闇。2.26事件。この時私は4歳だったのか。
戒厳令。破れるクーデター。衝撃的な血染に染まる北一輝の目隠し。それは冒頭の平吾の血染めの衣との対比か。
だが、暗すぎる。娯楽性は零。一輝の行動には不可解に感じる場面もある。難しすぎる。頭が可笑しくなりそう。
堅すぎる。とはいえ、出現する意味不明なヌードは一体何なのか。こういう作品は苦手である。
=====【完】=====

この年の日誌をパラパラと捲る。12月20日~25日東北に出張している。
オイルショック発生に伴う担当計画延期の為、仙台の役所通いだった。
38年後に大震災が起こるなど露知らず。青葉通りは平穏そのものに見えた。
だが、内情は物不足となり、トイレットペーパーが高騰した事を思い出す。
この年の公開邦画は辛うじて7本だけ観ている。が、リアルタイム鑑賞作品は少ない。
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【2】My Best7【各画像クリックで本文】
第1位
「戦争と人間(第三部)完結篇」

第2位
「恍惚の人」

こんな惨状をテーマにした映画が39年前に出来たのは驚異と思う。
嫁と舅の火花散る熱演は、今は「こちら」に変わっている模様だが、かってTVからよく聞えて来た「凄~い」そのものだった。
遥か昔の1940年に「小島の春」でハンセン病問題を世に問うた豊田四郎監督。思えば常に社会が抱える課題に挑戦した人であった。
第3位
「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」

リリーと寅さん。ピッタリと息が合う。これも似たもの同士だからこそ。
「寅さんに初恋した」と言っていたリリーが結婚。寅さんは北海道へ。「働きましょ」と元気よく。
“わすれな草”の意味は途中で分かる。その意味深長。単純なものではない。
第4位
「男はつらいよ 寅次郎夢枕」

寅さんの縁談話で、趣味=旅行。職業=出版関係。学校=実力主義。は傑作。
しぶ柿と大根干し風景に、ヴィヴァルディの「秋」が佳く合う。「愛染かつら」では28才だった田中絹代さん。此処では62~3才だろう。
甲州旧家の奥様役で、寅さんに人生を語る。風にそよぐ薄の穂。舞い落ちる落ち葉。山は雪だった。
「先生はお二階でお勉強」千代に扮する八千草薫の心根優し。彼女と岡倉の提灯持ちをして、千代の本音に、がっくりの寅さん。絶好のチャンスを逸す。
野球で言えば見事空振りの三振!。
第5位
「青幻記 遠い日の母は美しく」

鹿児島での辛い生活に耐えられず、この島に来たあの時。病の伝染を恐れて抱きしめてくれなかった母。踊りの巧かった母・・。
そして逝った母。その情感と、奄美の海の青は限りなく美しかった。
第6位
「男はつらいよ 私の寅さん」

ラスト“出版関係?!の職業”に精出す寅さん。傍らの非売品の肖像画は、キリギリスこと、りつ子が描いた絵に違いない。
りつ子に扮する岸惠子。私と同い年。私が社会人ほやほやの安月給取りだった頃、彼女は「ハワイの夜」で鶴田浩二と水着姿で抱擁する看板スター。
この映画の観客動員数も250万人に迫る盛況だった。イヴ・シャンピ監督との離婚はこの映画の2年程後。やはり故国の魅力は捨て切れなかったのだろうか?。
第7位
「戒厳令」

戒厳令。破れるクーデター。衝撃的な血染に染まる北一輝の目隠し。それは冒頭の平吾の血染めの衣との対比か。
だが、暗すぎる。娯楽性は零。一輝の行動には不可解に感じる場面もある。難しすぎる。頭が可笑しくなりそう。
堅すぎる。とはいえ、出現する意味不明なヌードは一体何なのか。こういう作品は苦手である。
=====【完】=====