嘆きの天使

1930年(独)[監督]ジョセフ・フォン・スタンバーグ[出演]エミール・ヤニングス。レオーネ・ディートリッヒ(他)
[ネタバレしています]

何処の国もキャバレーは盛況だったんだ。特等席のラート教授。満面の笑みが零れるよう。
身の破滅が待っている事も露知らずに。
生徒の前で鼻を噛む癖がある野暮な教授だった。だが教育には熱心だった。
「 キャバレー遊びに耽る生徒の現場を取り押さえよう」として、ミイラ取りがミイラに成り果てた。哀れである。

屈指の花形だった。
そんな彼女に甘い言葉を掛けられた。
大抵の男は逆上せあがり舞い上がる
(と思う)。

学校を辞める羽目に。
それでも
「角砂糖は幾つ入れる?」。
「三つ」。
と、甘い新婚生活。
しかしそれは長くは続かなかった。

元教授に「ピエロ姿で元生徒の前に現れよ」とは。
終戦直後にんだ新聞小説を思い出す。
生きるために、素人の娘が初めて裸で舞台に立つ一節を。
これらの人々以上の羞恥心はないだろう。

とぼとぼとラートが歩む雪の夜道。
その光と影が人生の厳しさと冷酷さをヒシヒシと伝える。
ラートの行く先は決まっていた。
言わずと知れた昔教鞭を執っていた教室。
「猿の惑星 創世記」では、猿は猿の世界に戻る。
元の世界は心の古里。
帰郷の真理は人間も猿も同じ。。

私は人間は弱い者と思う。
この映画もそれを言っているのではないだろうか?。
そして思う。人の痛みが分かる人になりたい。と。
其れはなかなか難しいこと。
でも願いたい。努めたい。そう在りたいと。