フランス映画の巨匠達

最近、ジャン・ルノワール監督と、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の未見作品を数本観る機会に恵まれた。
これを機に、私が観たフランス映画を対象にして、フランス映画の監督ベスト10を選んでみた。未見作品で優れた作品もあるので、完全なものとはいえないが。
さて。こういう場合は大抵、自己の好きな監督が1位になる。私で言えば、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督だ。
しかしこれでは全く面白くない。映画作品でも、高評価する作品が、必ずしも好きな作品とは云えない場合もある。また、その逆の場合もあり得る。。
ということで、ランク基準を次のように定めた。
①対象候補の監督の条件は、私がその監督の作品を3本以上観ていること。(1~2作品では危険を孕むと判断した結論)
②私の採点基準による、各作品の採点値を合計し、本数で除した値。即ち、平均点の順位とする。
③なお、採点基準の説明はご容赦下さい。各人により考え方は異なる筈。ここでの採点数字は、あくまで私の映画観に基づいて創った一定の計算式の結果です。
④平均点が同点の場合は、作品数の多い方を上位とする。
という次第で、次のように決まった。
[注釈]
①監督名の左の○内数字が、ランク順位。
②監督名の右の()内数字が、その監督作品の平均点。(小数点第2位で四捨五入)
③作品名の左の★印は、リアルタイム鑑賞作品。
④作品名の左の○内数字は、採点順位。(採点が同じ場合は、好み順)
⑤作品名の右の()内数字は、採点数字(100点満点)。
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①アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督(80.6点)

【ひとこと】
この映画をアルフレッド・ヒッチコック監督が観て発奮!「サイコ」を撮ったと洩れ聞く「恐怖の報酬」は、秀作中の秀作。私のお気に入り作品「空と海の間に」(1955年.仏)の脚本もクルーゾー監督だったなぁ。なお、未見のクルーゾー作品で、最も観たいのは「密告」(1943)である。
【既観賞作品とMy採点】
★①恐怖の報酬(91.4)
★②悪魔のような女(81)
③情婦マノン(80)
④犯罪河岸(70)
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②ジャン・ルノワール監督(75.6点)

【ひとこと】
受け継いだ父の血。あのガンジス河の風景よ。そしてカンカンは動く泰西名画哉。
【既観賞作品とMy採点】
①大いなる幻影(89)
★②河(83)
③自由への闘い(80)
★④フレンチ・カンカン(77)
⑤ゲームの規則(75)
⑥ラ・マルセイエーズ(73)
★⑦南部の人(73)
⑧小間使の日記(70)
⑨浜辺の女(60)
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③ジャック・ベッケル監督(75.0点)
【ひとこと】
パリに生まれ、54才で夭逝せる逸材。撮った本数少なくとも、ジャン・ルノワール監督の助監督を経た腕確か哉。
【既観賞作品とMy採点】
①肉体の冠(82)
②モンパルナスの灯(73)
★③現金に手を出すな(70)
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④マルセル・カルネ監督(74.3点)

【ひとこと】
ルネ・クレール監督の助監督を経た腕「天井~」に開花。戦時下一人フランスに残った心意気!。未見で観たい作品=「港のマリー」(1943年)
【既観賞作品とMy採点】
①天井桟敷の人々(84)
②霧の波止場(80)
③北ホテル(76)
④愛人ジュリエット(75)
★⑤嘆きのテレーズ(70)
★⑥われら巴里ツ子(61)
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⑤ルネ・クレール監督(74.0点)

【ひとこと】
「♪~鐘は鳴る~鐘は鳴る~マロニエの木陰道~♪」巴里ムードを描いて、この長老巨匠の右に出る人無し。
【既観賞作品とMy採点】
①巴里祭(83)
②巴里の屋根の下(75)
③自由を我等に(70)
③夜ごとの美女(68)
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⑥ジュリアン・デュヴィヴィエ監督(73.5点)

【ひとこと】
ジュリアン・デュヴィヴィエは日本人向き。私向き。チャイコフスキーが東洋的なのと似るか。鑑賞数22本はダントツ。その多さ故、平均点も損をしている感有るも。
【既観賞作品とMy採点】
①旅路の果て(90)
②望郷(85)
★③にんじん(83)
④舞踏会の手帖(80)
⑤商船テナシティー(80)
★⑥我等の仲間(78)
⑦地の果てを行く(77)
★⑧わが青春のマリアンヌ(77)
★⑨埋もれた青春(76)
★⑩アンリエットの巴里祭(76)
⑪アンナ・カレニナ(74)
★⑫巴里の空の下セーヌは流れる(72)
★⑬陽気なドンカミロ(71)
⑭神々の王国(70)
⑮フランス式十戒(70)
★⑯運命の饗宴(68)
★⑰肉体と幻想(68)
★⑱ドンカミロ頑張る(67)
⑲グレート・ワルツ(65)
⑳殺意の瞬間(64)
(21)奥様ご用心(63)
★(22)殺人狂想曲(63)
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⑦ルネ・クレマン監督(73.4点)

【ひとこと】
あの幼い子役に厳しい演技を強いた監督立派。応えた二人も立派哉→「禁じられた遊び」。
【既観賞作品とMy採点】
★①禁じられた遊び(87.6)
②鉄路の斗い(81)
③パリは燃えているか(80)
★④居酒屋(72)
⑤太陽がいっぱい(70)
⑥しのび逢い(70)
⑦狼は天使の匂い(70)
⑧パリは霧にぬれて(70)
⑨雨の訪問者(60)
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⑧ルイ・マル監督(73.4点)

【ひとこと】
私と同い年の監督。同じ頃癌を発病したが、天才は天に召され、凡才は生きながらえている。
【既観賞作品とMy採点】
①ルシアンの青春(80)
②鬼火(75)
③五月のミル(75)
④恋人たち(75)
⑤地下鉄のザジ(70)
★⑥沈黙の世界(70)=ジャック・イヴ・クーストー監督と共同監督。
⑦死刑台のエレベーター(69)
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⑨アンドレ・カイヤット監督(73.0点)
【ひとこと】
作品少なけれども粒揃う。未見の「眼には眼を」は是非観たい。
【既観賞作品とMy採点】
①裁きは終りぬ(82)
②ラインの仮橋(74)
★③洪水の前(63)
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⑩フランソワ・トリュフォー監督(70.7点)
【ひとこと】
ヌーベルヴァーグの音高く。
【既観賞作品とMy採点】
①華氏451(80)
②突然炎のごとく(69)
③アデルの恋の物語(63)
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【番外編】(その1)
なお、作品平均値70点以上の監督だけど、2作品しか観て居らず、ランクから除外した監督は次の通り。
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ジャン・コクトー監督('79.0点)
【ひとこと】
詩人ならでは撮り得ぬ。耽美。荘厳。尊厳の世界。
【既観賞作品とMy採点】
①美女と野獣(79)
②オルフェ(79)
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ジャック・フェデー監督(74.5点)
【ひとこと】
フランス映画4大巨匠の一人。「ミモザ館」を観て居れば…。
【既観賞作品とMy採点】
①女だけの都(76)
②外人部隊(73)
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ジャン・リュック・ゴダール監督(70.0点)
【ひとこと】
ドビッシー、クラシック音楽の型破る。ゴダール、映画創りの型破る。
【既観賞作品とMy採点】
①勝手にしやがれ(80)
②軽蔑(60)
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【番外編】(その2)
その他の優れたフランス映画列伝。(75点以上)
①「HOME 空から見た地球」(2008年)ヤン・アルテュス=ベルトラン監督(90)
★②「空と海の間に」(1956年)クリスチャン・ジャック監督(88)
★③「赤い風船」(1956年)アルベール・ラモリス監督(85)
④「影の軍隊」(1969年)ジャン・ピエール=メルヴィル監督(83)
⑤「インドシナ」(1992年)レジス・ヴァルニエ監督(81)
⑥「うつくしい人生」(1999年)フランソワ・デュペイロン監督(80)
⑦「宿命」(1957年)ジュールス・ダッシン監督(80)
★⑧「白い馬」(1952年)アルベール・ラモリス監督(80)
⑨「スリ(掏摸)」(1960年)ロベール・ブレッソン監督(80)
⑩「オーケストラ!」(2009年)ラデュ・ミヘイレアニュ監督(78)
⑪「ピエロの赤い鼻」(2003年)ルイ・ベッケル監督(77)
⑫「パリ20区、僕たちのクラス」(2008年)ローラン・カンテ監督(76)
⑬「皇帝ペンギン」(2005年)リュック・ジャケ監督(75)
⑭「追想」(1975年)ロベール・アンリコ監督(75)
⑮「パルムの僧院」(1951年)クリスチャン・ジャック監督(75)
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こんな遊びも乙なものである。
次は、イタリア、アメリカ、日本、等の巨匠達についても試みてみたいと思っている。
-- FIN --