タイタニックの最期

タイタニック映画は何度か映画化されているようだが、分けても1997年にジェームズ・キャメロン監督が、レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットの主演で撮った作品が有名だろう。
これは1953年のジーン・ネグレスコ作品。「雨のランチプール」など見せ場を撮らせると上手い監督だった。
その反面で「足ながおじさん」という傑作ミュージカルや、マリリン・モンロー主演の「百万長者と結婚する方法」なども撮っている。多才監督との印象が深い。
冒頭、史実に基づいて云々と出る通り、可成りの臨場感がある。船型などそっくりだし、例えば、メインホールの豪華なロビーなども、、。
余談になるが、キャメロン作品のそれは酷似している。独断と偏見による推測になるが、44年前のこの作品が相当参考になっているのではないだろうか?。
如何に史実に基づくと言えども、フィクションである以上、劇的要素を盛り込まぬと面白くない。此処ではクリフトン・ウェッブとバーバラ・スタンウィック夫妻の恩讐を超える愛に、父子愛も織り込み、生死に直面する家族の葛藤を描いている。これがバックボーンになり作品を引き締めた。
無論、いろいろな乗客や、船員たちの葛藤と行動も綾を添える。氷山発見の報に、判断を誤る船長。抗議出来ず命に従う船員。これは「八甲田山」のそれと同じだ。
沈没シークェンス。婦女子は救命ボートに乗れるのに、それを拒んで夫の許に戻る妻が居た。他人にボートを譲り、自分に冷たい父を求めてタイタニックに戻る少年。悲痛極まりない。
断続してSOSを告げるタイタニックのサイレンが、断末魔の猛獣を思わせる様で臨場感満点。
堅く堅く手を繋ぎあい「主よ身許に近づかん」を合唱する船客。大きく傾く甲板で楽団が奏でる「ロンドンデリー」のメロディが実に哀しかった。
19隻のボートに乗れた人712人として、史実に基づき作られたという映画は終わる。