午後の遺言状

百万弗の笑顔。乙羽信子の遺作となったのは周知の通りだが、この映画で彼女の娘が、実は自分の夫との子だったと知った時の杉村春子の演技が絶品である。
この二人の葛藤もさることながら、寧ろ私が佳いと感じたのは、サイド・ストーリーとして展開される観世栄夫と朝霧鏡子が演じる夫婦のエピソード。
かって舞台で演じたチェーホフの「かもめ」の台詞を喋る、朝霧鏡子の顔に、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督が撮った名作「旅路の果て」で喋る、ミシェル・シモンが覆い被さってきた。そんな妻を愛する夫の姿勢と行動にも胸打たれる思いであった。
最近「一枚のハガキ」を撮られた新藤兼人監督。先日TVで、「まだ撮りたい作品が一つある」と情熱を吐露されていた。青春とは心の若さですね。尊敬します。
[私の評価]秀作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→②。
1995年(2011/8/14TV録画観賞=再見).日[監督]新藤兼人[撮影]三宅義行[音楽]林光[主な出演者★=好演☆=印象]★乙羽信子。★杉村春子。★朝霧鏡子。☆観世栄夫。津川雅彦[上映時間]1時間52分。