ファンシィダンス

ロック・バンドに夢中だった陽平は寺の跡継ぎだった。本当にバリカンで丸坊主になるリアルなショットが凄い。昔は鬘で誤魔化していたもの。
撮られた時期が1989年。昭和から平成へのバトンタッチを連想する。現在は民主から自民へのバトンタッチか。
住職の資格を執るため、人里離れた禅寺で励む修業が面白い。面白いとは不埒か。だが、コミック喜劇だから当然。
それでも修行の、厳しさは可成り密度濃く描かれている。毎晩9時就寝。寝る姿勢まで決められているのには驚愕のほか無い。
3時には起床。仏に仕える山積みの日課。先輩僧の指導は厳しい。日常生活の紹介も実に綿密に描かれている。トイレット・ペーパーを使わない汲み取り式厠での作法など傑作である。
「なんだか馬鹿馬鹿しいなぁ」と少しは思いつつも、知らず知らずの間にこの映画にのめり込まされていた。
この魅力の要因は、上述した雰囲気を秘めた周防正行監督の演出。そして、多分この作品が主演デビューと思われる本木雅弘(陽平)。と、その他のキャスト陣によるユーモアたっぷりの演技にある。
要は、指導的立場にある僧もまた喜怒哀楽を保持している人間である。食い気もあれば、色気も持っている。と主張しているように思える。
陽平がポーカル時代の彼女、真朱(鈴木保奈美)とのラストが傑作である。