神様のくれた赤ん坊 1979年('80公開)

「マダムと女房」(以下前者と呼ぶ)と「神様のくれた赤ん坊」(以下後者と呼ぶ)の時差は半世紀ある。その間、事の善し悪しはちょっと別に置いといて、価値観は180度転換す。
純潔と貞操を旨とした前者の女房にとっては、後者に於ける小夜子の同棲というライフ・スタイルは、正に青天の霹靂ではないだろうか。
そんな小夜子も、同棲中の晋作に子供が居たかもしれないという事実は青天の霹靂に近かったろう。突如現れた女性に押しつけられた子供だった。斯くて、幼い新一の真の親探しに出かける二人のロードムービーが始まる。
尋ねるは5人の疑惑男。結果は父親ではなかったり。逃げ回る男も居たりして、最後に尋ねた男はなんと他界していた。
絶望の心情が手に取るような二人。其処に出現する「新一を引き取る」と言う女性が天使に見えた二人。晋作に扮する渡瀬恒彦と、小夜子を演じる桃井かおりが、人間臭さを露呈し好演。
「息子のまなざし」を連想させる意外な結末と共に、人みな善なりを思わせる
後者の時代から30年以上経つ。前者と後者の変遷ほどの変化は今のところ思い当たらず。何とならば、このロードムービーに今も新鮮な香りを嗅ぐことが出来るから。
強いて苦言を呈すれば、親探しの尾道、別府、若松などに対する、小夜子の故郷紀行ともいえる天草、長崎、唐津など。主題とさして無関係の土地が同じ比重で重なり合う。これが私の視界からは稍冗漫に写ることである。