ル・アーヴルの靴みがき 2011年('12公開)芬蘭/仏/独

よく耳にする「マッチ工場の少女」は未見だけど、アキ・カウリスマキ監督の敗者3部作と称される
(A)「浮き雲」。
(B)「過去のない男」。
(C)「街のあかり」。
は見ている。ところで何故敗者と云うのだろう?。未だに解らないで居る。私なりに感じるこれら3作品の共通点は、
①何処かもの悲しく暗そうな北欧の横顔と雰囲気。
②如何にも貧しそうな生活。
③割合少ないと感じる台詞。
④比較的に動きの少ない表情や動作。
⑤濃いブルー基調の中に燃えるような赤色を求める色調。
⑥心に食い込んでくるような音楽。
⑦ソ連に悩まされた歴史を持つ祖国フィンランドを愛する心が滲み出る。
といったところ。①~④辺りからそう呼称するのだろうか?。でも⑤~⑦はプラス思考の範疇に入る。具体的には、
(A)「浮き雲」は音楽が効果的。北欧の美しい紅葉や可愛い犬も華添える中で、チャイコフスキーの「悲愴」を筆頭に、ピアノ曲や室内楽や独唱などが、貧しくとも逞しい生活を滲み出させていた。
(B)「過去のない男」は、暗闇と貧困の中から勇気と活力と光を求めるパワーと粘りを感じ取った。
(C)辛うじて、静寂の白夜の国に映える「街のあかり」からは、ヘビースモークな生活態度が目立ち、敗者の匂いを感じたけど。
この作品も敗者の匂いは特にしない。先日見た、豪華なコース料理のような「アルゴ」とは対照的。犬のライカがスパイスの味を引き立てる素朴な一品料理の味だ。
昨日「東京キッド」で、映画は娯楽云々と書いたが、娯楽性は限りなく0に近い。
道に落ちる家の影が長い。だが背景はフインランドではない。
フランス。ル・アーブルの靴磨き描写は冒頭のみ。主題は“人の善意”にあると見た。
その一貫したテーマ描写からは、流石アキ・カウリスマキ・ワールドと感じる。
だが、ファンタジアではないが故に、ありラストは奇異に感じた。
また、バンド演奏の場面が不自然なほど長すぎるのも、如何にも不自然に映った。
先述した共通点は、①②⑥といったところ。
といったことから、敗者3部作には僅かに及ばぬと思ったりはするが?。