かぞくのくに 2011年(2012年公開)

この映画のテーマは肉親愛。特に兄妹愛が、安藤サクラの胸の透くような名演で、切ないほど描き切れて居る。
兄妹愛といえば、「昭和枯れすすき」(1975年)や「火垂るの墓」(1988)を思い起こす。が、この2篇は兄が妹を想う愛だった。
こちらは妹が兄に寄せる直向きさがひしひしと伝わる。昔、兄弟は他人の始まりとかいう言葉を耳にしたこともある。私にも妹が居る。お互いに成人し別所帯ともなれば、ある意味では分からぬこともないけれども、精神的な本質は血を分けた人間として、兄が妹を想い、妹が兄を慕うのは当然のことだろう。
そのことを、国家体制の違いから断絶された環境下で、束の間の再会となるほんのひとときを、動的に、哀しく、そして歯切れ良く描くが故に、生きる世の切なさや、儚さを痛切に思わせ、考えさせるのである。所詮、人の命は短くて苦しきことのみ多いのであろうか?。紛れもない秀作。