
極めて平凡な言葉乍ら、これは親,子,孫,三代に亘る雄大な叙事詩だ。その舞台が東から西進し、北と南が相争う広大な米大陸だけに、また、その時代背景が近代的な国家誕生前の19世紀ゆえに、恰もブラックホールの強力な磁界に吸い寄せられるが如き魅力を有して居る。
全編の要所で流れる主題歌「♪草原の我家」が一貫して長大なストーリーを締めて居る。キリリと光るエピソードも強印象を刻む。
①荒れ狂う河の筏下りから、歌手リリスの誕生迄は、一瞬「帰らざる河」が浮かんでシャボン玉のように消えた。
②シャイアン族との格闘シーン。これぞ西部劇の「ベン・ハー」哉。
③ゼブが熱望した南北戦争であったが、その影に垣間見る反戦思想。ジョン・フォードの演出が伝わって来るのもこの周辺だった。
④シェラ・ネバダの山並みを東進するセントラルと、大ロッキー山脈を西進するユニオンの鉄道敷設合戦。これこそ正に「大平原」!。
といったところである。

大スタアがキラ星の如く顔見せし、ハッピー・エンドで終わるハリウッドの娯楽劇ではないかという見方も成り立たぬ事はない。だけどその何処が悪い?!。と、つらつら考えてみるに、日本は未だ徳川政権さえ確立して居なかった頃、金門湾の遠景で終わる近代国家アメリカ建国に纏わる大辞典の如き雄大な歴史劇に、私は、進取の気性に富む此の国の心髄を見る気がするのである。
ハリウッド映画を無視して映画は語れない。
【私の評価】力作の匂い豊かな佳作。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→①。
1962年(2011/9/25観賞=初見).米(MGM)[監督]ヘンリー・ハサウェイ。ジョン・フォード。ジョージ・マーシャル[撮影]ウィリアム・H・ダニエルズ。ミルトン・クラスナー。チャールズ・ラング・Jr。ジョセフ・ラシェル[音楽]アルフレッド・ニューマン[主な出演者☆=印象]☆ジェームズ・スチュワート。キャロル・ベイカー。☆デビー・レイノルズ。グレゴリー・ペック。☆ジョージ・ペパード。ジョン・ウェイン。☆リチャード・ウィドマーク。ヘンリー・フォンダ。☆イーライ・ウォラック[原題]HOW THE WEST WAS WON[上映時間]2時間45分。
BSでご覧になったのですね。おめでとうございます。
半世紀前の作品をWBは最新のテクノロジーを駆使し昨日出来上がったかのように実に美しくリマスターしてくれ敬服します。ただ2本のスジがあってこその「シネラマ」ですから、デジタル処理されスジがなくなってしまい単なるwide screenになってしまい残念です(贅沢?)。
冒頭、ホントはビング・クロスビーが解説する筈をスペンサー・トレイシーに代り、静かな語りで空撮されるロッキー山脈の映像はシネラマ第1作「これがシネラマだ」からのフィルム流用ですがご記憶ありますか?。本作品を話したら明日の今ごろになってしまいますが「西部劇を観た」のではなく「西部劇の時代を観た」と毎回想う僕であります。
この作品の魅力の一つに、最初はD・ティオムキンが担当する予定でしたが目を患い降板しA・ニューマンに替わりましたが彼の率いるMGMオーケストラ、そしてニューマンを支えるケン・ダービーとその合唱団を忘れません。
19世紀の民謡をアレンジし時にダイナミックに、ある時は哀しく繊細に全編に流れるスコアはスペクタル映画の中で秀逸です。
きいた話では前回の旧プリントの時も今回のリマスター版においてもBSは4分強のoverture(序曲)をカットしたようですね。序曲は本編に期待感を持たせる重要なファクターですからとても残念です。
そもそも現在の作品でovertureは殆どないではありませんか!。序曲も映画文化の一つですよ。
ネットで遊んでいたら素晴らしいシネラマ解説と詳細西部開拓史を発見しました。
http://loyd-theater.com/site-map/site-map.htmlの中のThe CINERAMA Movies.です。とても勉強になります。
何と書いたか自信がありません。
D・レイノルズ歌う「a home in the meadow」は原曲は「グリーン・スリーブズ」である事は常識で16世紀の音楽、と念の為に補足しておきます(ペコリ)。
やっと、観られました。5年目の恋が実現したみたいです。(笑)
>シネラマ第1作「これがシネラマだ」からのフィルム流用ですがご記憶ありますか?。
覚えています。あのロッキー山脈は雄大でしたから。
>overture(序曲)
やはり、そうでしたか。「overtureがあればいいのに」と一瞬思いましたもの。
>http://loyd-theater.com/site-map/site-map.html
ご紹介、ありがとうございました。覗いてみました。映画の事典ですねぇ。
コメント欄を開封するのが今朝になりました。追伸まで頂戴してご迷惑をかけました。
見ごたえのある作品でしたね。
西部開拓時代のイメージといえば、無法者や先住民との争いばかりという感じだったので、マウンテンマンや武器をもたない郵便配達人のようなひとがいた事に驚きました。
この時代に生きた人々の力強い魅力もぎゅっと詰め込まれてましたね。
この作品のおかげでますます西部劇が楽しくみられそうです。
コメントありがとうございます。
宵乃が仰ることに、「うん、うん!」と頷いている私が今した。
西部劇というと、白人の原住民差別が浮かびやすいです。私は、その反省を込めた西部劇で、そのことの禊ぎをしていたと思っていましたが、この映画を観て、そんな悪い白人ばかりではなかったことを知り、そっと安堵の胸を撫で下ろしました。
風景も美しかったです。
先日のサイトにテアトル東京と西部開拓史に付いて寄稿致しました。お時間がある時にでもご覧下さい。
お久しぶりです。
> 先日のサイトにテアトル東京と西部開拓史に付いて寄稿致しました。お時間がある時にでもご覧下さい。
早速、拝読させて頂きました。
いゃ~、吃驚仰天!。
なんといいますか。雄大にして緻密。
DCPさんらしい水も漏らさぬ完璧な大論陣ですね!。
ほんとうに、参りました。
ありがとうございました。
DCPさんに、お読み頂いているブログとして光栄に思います。
過分にお褒め頂き恐縮です。
単にボケたら一大事ですから今の内に我が青春のシネラマを書きとめておきたくHPのオーナー様でありますloydさんに甘えさせて頂いた次第です。
尚、あちらとこちらではニックネームが異なります。昔使ったニックネームでトラブルがあり慌ててDCPにした経緯がありますが、こちらではそのままで今後もお付き合い頂きたくお願い申し上げます。
お手数かけますので返信は無用です。
そうそう、マリリン・ファンな私ですが、河下りは「帰らざる河」より迫力があったように思います。
スターがいっぱい、監督も撮影監督もいっぱい、な豪華作でした。
キャロル・ベイカーさんは「大いなる西部」など、西部劇にけっこう出ていますね。美人で好きです!
コメントありがとうございます。
確かにあの河下りは3D映画を思わす迫力がありましたよね。
熱烈なマリリン・ファンのボーさんに、「帰らざる河」より上かも、とのお墨付きを頂いたのですから。
正に、監督と俳優、勢揃いの顔見せ興行でしたね。
キャロル・ベイカーさんも、お好きですか。「大いなる西部」の冒頭で、山高帽のグレゴリー・ペックの傍らで、疾走する馬車に颯爽と乗っていたのが印象的です。
寒い時や風の強い日には涙がたまり参ってます。決して悲しい映画を毎日観ているわけではないのですが(笑)。
前にお話しした下記のHPのシネラマと西部開拓史のコーナーに未完でした投稿は最終章として完結致しましたので稚拙な駄文でお恥ずかしいですがお時間のある時にでもお読み頂ければ幸いです。
お知らせ有難う御座いました。
早速拝読いたしました。
DCPさん渾身のレビューに、ただただ驚嘆して居ります。
2本の筋がありてこそシネラマだ。との御説、全くその通りだと頷いております。
シネラマ西部開拓史に対するDCPさんの情熱が、ひしひしと伝わって参りました。
ありがとうございました。