オカンの嫁入り

お涙頂戴では無いのはgood。そして或る日突然、30才の金髪男と愛し合う母を許せぬ娘の気持ちも良く分かる。「月子のお父さんは、お母さんにとって最初にして最後の人」と常々聴いていたんだもの。そんな陽子に片思いしていた男が居た。と話は巧く綴られている。
「阪急電車」という映画があったなぁ。この映画では京阪電車が屡々お目見えする。沿線に住む村上医師が片思いの主。彼は月子に「“ツルカメ、ツルカメ”と二回唱えるんやで」と念を押す。言葉が伏線として活きて来るアイデアは巧い。尤も月子のトラウマは稍大袈裟だが気になるほどでもない。
反面、生きた小道具として、犬の使い方は巧かった。犬にも尿路結石が起こるんだった。
以下は、私のひとりごとです。
次女が可愛がっていた老犬を受け継いで飼っている。私と同じ白内障の上、フィラリア病。が、最早家族同然。長生きせぇよ~。
ところで、最近よく思う。癌と介護と不倫を組み合わせば現代ドラマになると。
此の映画も其の例に漏れぬ。と思いながら観ている内に去来して来た事がある。
此は私の独断と偏見かも知れぬ。又、決して同情や哀れみ等を求めて言って居るのでは無いと前置きの上で言わせて貰えれば、
家族を癌で亡くした一人間として、少なくとも私の眼には「同じ癌を描くのなら、表面的な事象だけ描いていはしないか!と。
「非体験者に無理を言っても困る」との声も聞こえそう。
でも例えば、同じ様な被体験者に、愛しているからこそ成し得た不治の肉親の介護体験を聴いたりして、勉強した上での作品だったろうか?と。
私の眼には、眼には見えぬ内面描写が全般的に不足気味。
大竹しのぶの心情吐露は認めるものの、彼女の外見的な白無垢姿のシーンに最大の焦点を絞った演出に見えて仕方ならないのである。
この映画の中で、月子が「餌は此のドッグフードなのよツ!」と、ジェームズ・ディーンに怒るショットがある。でも、犬は、ディーンが与えた味噌汁ぶっかけ飯に目から鱗なのである。脚本家か、演出家が、じっくり犬を勉強していると判る。
このような勉強を、人間にもして欲しかった。
と、私は言いたい。と、いったようなことから、
【私の評価】中の中。
【私の好み度(①好む。②好む方。③普通。④嫌な方。⑤嫌)】→③。
2010年(2011/12/16観賞=初見).日[監督]呉美保[撮影]谷川創平[音楽]田中拓人[主な出演者★=好演☆=印象]★大竹しのぶ。宮崎あおい。桐谷健太。★國村隼。☆絵沢萠子。林泰文[上映時間]1時間50分。